第二章 13





  



 ロンにお姫様抱っこされた私は自分の部屋に連れて行かれた。

 どうも、私が監禁されてた場所は王宮の地下だったらしい。

 しかも、ロンたちでさえ知らなかった地下室。

 そのことだけ教えてくれてあとでゆっくり説明してくれるといったので、

 取り合えずおとなしく従った。

 部屋にもどるとすぐにお風呂の準備がしてあった。

 ロンがそのままお風呂場まで連れて行ってくれてくれた。

 脱ごうとしたときもいたときはびっくりしたけど。

 「手伝ってあげるよ。」

 なんて、にこやかに言われてもそれだけはご勘弁を。

 「オレが入れてあげるって言うんだ。普通、ありがたくお礼をいって・・・。」
 
 そこまで言ったロンにタオルを投げて脱衣室から追い出した。

 どうよ、それってセクハラでしょ?セクハラ王様っていかんと思うぞ。

 ブツブツと文句言いながらお風呂に入る。

 あ〜、やっぱりお風呂はいいねぇ。

 疲れを取るのはお風呂にかぎるよ。

 




 すっきりさっぱりしてお風呂から出てきた私をロンは待ち構えていた。

 「まだいたの・・?」

 ボソッといった言葉がどうも届いたらしい。

 「お前なぁ〜。待っててあげたんだぞ。お礼ぐらい言えんのか。」

 お礼ねぇ。ここまで親切にされるとなんか裏があるようで・・・。

 「無礼な。オレは紳士だぞ。お前をちゃんと・・・・。」

 途中まで言いかけて、止めた。途中で止められると気になるんですが。

 「まあ、いい。とにかく早く着替えろ。それから大事な話がある。」

 はいはいっと。まったく、オレ様国王は命令ばっかりだね。

 あれ?そういえばニコがいない。こんなときは必ずいるのに・・・・。

 「ニコは別の部屋で待機だ。つべこべ言わずにとっとと着替えろ。まさか、一人じゃ

 着替えられないのか?しょうがないなぁ。手伝ってやるよ。」

 そういってガウンを取ろうとする。

 思いっきりロンを投げ飛ばし、部屋の外に出した。

 まったく、油断も隙もない、あのエロ国王。あんなんで、よく国をまとめてるよ・・・・。

 ブツブツ言いながら私は洋服に着替えた。

 ロンはドアの外で待ってた。

 なんで、こんなにべったりくっついてるんだろ。

 何かあるのかな?

 じゃないと、わざわざロンがじきじきに警護するなんておかしいよね。

 コーナンが警護すればいいことだし・・・。

 なんでロンが?

 考え事していたら、あっという間にロンの部屋に着いた。

 「ここが、一番安心だから。」

 そういって私を招き入れた。

 部屋にはニコ、ロール、コーナンがいた。みんな黙って私たちを見ていた。

 とても空気が重い。

 私はロンの隣にくっつくようにソファーに座らせられた。

 そんなにくっつかなくても・・・・。今更何も起こらないと思うよ。

 ロンは奥に座っていたニコに向かって言った。

 「お待たせしたね、西の魔女。説明を聞きましょうか。」

 西の魔女・・・。歴史の勉強の時に出てきた。

 この国が何かあったときにでてくる魔女。

 ロンの口ぶりからするとニコが今回のことを企てたんだろう。

 でも、西の魔女って悪い魔女じゃないはず。逆にこの国を守るために動く者だって本に書いてあった。

 いったい、なぜ?




 ニコはいつものニコじゃなかった。いつもはココのメイド服を着ていたのに茶色のフードつきのマントを被っている。

 いかにも魔女って感じ。

 でも、優しそうな表情は変らない。

 いつものニコだ。

 ニコと目が合うと笑いかけてくれたので私も笑顔で応えようとしたらロンに隠された。

 ちょっとニコと私の間に入らないでよね。

 睨みあげてみたけどロンはしらんぷり。まったく。

 「で、どうしてこんなことをしたのか。説明してくれますか?」

 丁寧だけどとても冷たい口調。人前でのロンの口調。相当怒っているような感じもするけど。

 「まず、ヒナタに謝らせてください。」

 そうはっきりした言葉が返ってきた。私はロンを無理やり横に押しやり、ニコと向き合うように座った。

 今までのニコのことを考えたらきっと何かわけがあると思う。

 ニコは誰かを傷つけるためにこんなことをするような子じゃない。私は信じてる。

 「ヒナタ、怖い思いさせてごめんね。」

 そういってニコは頭を下げた。

 「ニコのことだから何か理由があるんでしょう?」

 私の問いにびっくりした表情になる。

 「怒ってないの?」

 「犯人がニコだとわかった時点で何か理由があるのかなって。そうでしょ?」

 確信をもってニコの目を見つめた。ニコは真剣な目をして私を見つめ返した。しばらく見つめあう。

 「ヒナタが予言の少女で本当によかった。」

 そう言ってとても綺麗に笑った。

 「私はね、あなたの気持をはっきりするためにこのことを計画したの。

  私の言ってることヒナタならわかるよね。」

 私の気持ち・・・・・。

 「そう、今回のことで自分の気持ちわかったでしょ?」

 うん、はっきり気づいた。ロンが好きだと。

 「そう、その気持ち・・・。って口に出てるよ、ヒナタ。」

 え?口に・・・・?

 おもわず横に座ってるロンを見てしまった。ロンは驚いている。

 もしかして、私、みんなの前で告白した?

 ぎゃ〜〜〜〜〜!!

 すくっと立って私は一目散に逃げた。

 ああ、穴があったら入りたい。

 こんな形で告白するなんてありえないから。もう、泣きたい。

 廊下を走ってたら何人かに声をかけられたけどもうそれどころじゃないから。

 ごめんなさい。

 いま、いっぱいいっぱいです。パニくってます。

 とにかく外に向かって逃げた。

 逃げたつもりが後ろから捕まえられた。

 「ヒナタ。」

 甘い甘い声で私の耳元でささやく。

 そんな人は一人しかいない。

 今はとてもじゃないけど顔は見れませんから。

 黙ってるともう一度

 「ヒナタ。」

 とささやかれた。その声、反則ですから。

 彼にそんなふうにささやかれたら動けなくなってしまう。

 そんな声を聞いてしまうと私は溶けてしまうよ。

 おとなしくなってしまった私をぎゅっと抱きしめる。

 「ヒナタ、さっきの告白聞かなかったことにしてもいいかな?」

 その言葉に涙でそうになった。

 そうだよね、ロンには婚約者がいるんだもんね。迷惑だったね。

 涙をこらえる。

 泣いたらきっとロンは優しいから困ってしまう。

 「こっちを向いて?」

 こんな顔見せたくない。

 イヤイヤと頭をふって抵抗する。

 「こっちを向かないと話ができないだろ?」

 話って、これ以上拒絶の言葉は聞きたくない。

 聞けば泣いちゃう。

 また、イヤイヤと頭を振った。

 「そっか、ヒナタはオレの顔みたくないんだね。」

 そんなんじゃない。

 ちがうよ。ちがう。

 振り向いて、否定しようとしたらにっこり笑うロンの顔が見えた。

 こんなときになんで笑うのさ。

 ひどいや。

 睨んでると、クスリと笑われた。

 「ヒナタ、好きだよ。大好きだ。」

 そう言いながらロンはキスをした。

 唇から頬、まぶた、おでこ・・・・。顔中にそっとやさしく。顔中にキスの雨が降る。

 「ヒナタから告白されるなんて思ってもみなかったからすごくうれしかった。

  だけど、オレとしては自分からしたかったんだ。へんなプライドかもしれないけど。

  だから無しにしてくれっていったんだ。

  ごめん。傷つかせるつもりなんかなかったんだ。」

 そしてまた私の唇にキスをする。

 「大好きだよ、ヒナタ。」

 ぎゅっと抱きしめられた私は我慢していた涙があふれてしまった。

 私も大好きだよ、ロン。


 

 




  









    






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