第二章 14





  

「で、なんでヒナタの気持ちをわからせる必要があったのですか?」

 ロンと日向がいなくなった部屋で、ロールがニコにたずねた。

 「なんでって、どういう意味ですか?」

 ニコは2人が走り去った後を見つめていた。

 あの2人なら大丈夫だよね・・・・。

 そう信じたい。信じないと先に進めないのだ。

 ニコの質問には答えそうにないロールのほうを向きなおし彼をじっと見つめた。

 しばらく見つめ合っていたが、ニコが観念したかのようにため息をついた。

 「わかりました。話します。その代わり、2人にはまだ言わないでください。」

 ニコの真剣な表情をまるで心の中まで探るように見つめていたロールは静かにうなずいた。

 「彼女がこっちの世界に来る少し前、占いで出たのです。彼女が来ることが。

 それから、スターター国の不穏な動きについても占いに出てました。

 スターター国は今のこの国には手ごわすぎます。近隣の国にかなり手を回して確実に手に入れようとしています。

 そこまでしてもこの国がほしいようです。なぜだかわかりますか?」
 
 ニコの質問に静かに答えた。
 
 「水と土・・・・ですか。」

 その答えにニコリと笑った。

 「さすが文官長。調べはついてるみたいですね。この国の水はなぜかどの国のものよりも澄んでいており、

 土の状態が良いため、作物の育ちがいいです。
 
 その作物は栄養・味・見た目どれをとっても世界一です。それゆえに、誰もがこの国に水や土を求め、

 人が集まります。人が集まれば国が豊かになっていきます。土地と水は誰も作ることが出来ない。

 それゆえ、人はそれを追い求めてしまいます。」

 ニコの言葉はロールが考えていたものと同じだった。

 「この国を制覇するにはどうしたら一番いいと思います?」
 
 「この国の弱点・・・・。予言の少女ですか。」

 その答えにまたニコリと笑った。

 「そう、ヒナタです。まだ、この国の支えでもあり、この国のもっとも弱いところ。

 今のうちに彼女を消すことが出来れば国全体の大ダメージとなって、そこで一気に攻め込む・・・。

 だけど、意外とヒナタが強かった。なかなか消すことが出来ない。となれば、ヒナタをこの国から

 追い出すことを考える・・・・。」

 この国から追い出す?どうやって?

 「占いでは、国王とヒナタの仲を引き裂くと出ました。お互いの気持ちを利用して。」

 ニコの言葉はとても冷たいものだった。

 「東の魔女は利用できるものは何でも利用します。たとえ人の心でも。お互いが惹かれあうことは

 占いに出ました。そこを東の魔女はついてくると思います。」

 東の魔女はとても冷酷で計算高いと聞いている。ニコのいってることは間違いないだろう。

 「下手な戦争を仕掛けてくるより怖いと思います。心理的にせめてきますから。というか、

 じわじわときてるんですよ、実際。気づいているでしょ?」

 ロールは神官もかねており、王宮の結界を彼がほとんどやっていた。

 ここ最近、結界に入り込もうとする人数が増えているのだ。

 「きっと向こうも焦ってきてると思います。だんだん、お互い惹かれあってきてますから。

 惹かれあって2人の気持ちが通じたらもう手出しは出来ないと占いに出てます。」

 その言葉にロールは疑問に思った。
 
 「でも、2人の仲を引き裂くと出たのでは?」

 ふふ〜んとニコは笑っていた。

 「2人の気持ちがつながったらもう最強です。これは絶対なんです。先代の予言ですから。

 だから、2人の気持ちがつながる前じゃないと東の魔女の手だしが出来ない・・・。」

 ここまで話すとニコはふーっと息をついた。

 「邪魔が入る前に2人にはくっついていただかないとこの国は本当に危険でした。

 でも、人の感情を操作したくない。それだけはやってはいけない。

 だから王宮に入り込んで2人を見守りました。その先は知ってますよね。」

 「お互い惹かれあってるのになかなか先に進もうとしない・・・。」

 ロンとヒナタの周りはみなが気づいておりながら口出すことも出来ず、

 ハラハラドキドキしていたのだ。

 「なのでちょっとだけ手をださせていただいたのです。

 だけど、お互いの心は操作してません。それだけは絶対です。

 心配をかけて申し訳ありませんでした。」

 そういうと、ニコはロールに深く頭を下げた。

 「もう一つ、あなたが西の魔女だという確証は?」

 「これでよろしいでしょうか?」

 ニコは右の手のひらの円陣を見せた。

 西の魔女には右手、東の魔女には左手に魔方陣のあざが生まれつきあるのだ。

 右の手のひらの円陣から虹が出てきた。

 それはとても幻想的でいつまでも見つめていたい暖かい気持ちにロールはなった。

 それこそが西の魔女の証であり、彼女の力の大きさだった。

 「東の魔女は次の手を打ってくるでしょう。私は私なりに力の限りこの国を

 守れるようにいたします。」

 ニコの言葉にロールは暖かいものを感じながら、うなずいた。

 

 

 

 




 

 




  









    






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