第二章 12





  


 もう、どれくらい時間経ったかなぁ。

 はぁ。

 なかなか手首の縄が切れてくれない。

 ガラスがうまく当たんなくてさっきから自分の手首を切ってるような気がする。

 ドラマや映画みたいにはいかないね。

 腕がつりそうにもなってきたし。

 はぁ。

 数回目のため息をついてちょっと休憩。

 それにしても暗いところ・・・。ここってどこなんだろうか。

 王宮内なのかな。でも、王宮内にこんな暗いところあるとは思えないし。
 
 フォレット国は全体的にとても明るい。

 贅沢品で明るくなってるとかじゃなく、雰囲気が明るいのだ。一言でいうと陽気な国?

 だから、こんなくらい場所があるような感じではない。

 でもなぜか居心地が良い。なんでだろう。

 最初は怖かったけど、恐怖感はなくなった。
 
 危機感はあるけど。

 でも、フォレットの国の人がこんなことするとは思えない。

 もしかして、スターターの人につかまえられたのかな?

 でも、それだったら私を生かしておかないよね。暗殺者を送るくらいだから。

 だとしたら、どんな目的で私をここに閉じ込めてるのかしら。

 そのメリットは?

 私に魔法が使えるわけじゃないし。

 だいたい、予言の少女としてここにきたのにそれらしきことは何一つしてない。

 ほんと、申し訳ないぐらいに。

 それに毎日遊んでばかりで・・・・・。

 挙句の果てにはロンと話せなくなるし。

 ロン。

 思い出しちゃった。考えないようにしてたのに。

 ロン。

 会いたいよぅ・・・・・。

 ロン。






 扉の向こうでドタドタという音が聞こえた。

 突然扉が開く。

 扉の向こうがまぶしくて誰が立っているのか見えない。

 目を凝らしていると急に抱きしめられた。

 「よかった・・・・・。」

 そうつぶやいたのはロンだった。

 ロンが助けに来てくれた。

 安心感でいっぱいになり、涙が出てきた。

 「ロン〜。」

 名前を何度も呼びながらロンの胸の中で泣いてしまった。

 「ヒナタ、もう大丈夫だから。ね。」

 そういって私の顔中に優しくキスをしてきた。

 涙でぐしょぐしょになってたのにもかかわらず、いっぱいキスしてくれた。

 いつものロンだ。

 冷たいロンじゃない。

 ロンに嫌われてたんじゃないんだ。

 嫌われてなかったと思うとまた安心して涙がでる。

 そんな私の両頬をそっと包んで今度は唇にキスをして、

 「もう、泣かないで。」
 
 と、ちょっと困った顔で言われてしまった。

 

 




 「え〜、続きは違うところでやっていただきたいのですが・・・・。」

 ロールの声が、ロンの後ろで聞こえた。

 ぎゃ〜。いたの!!

 恥ずかしさのあまり逃げようと思ってもがっしりとロンに包まれていたので逃げられず。
 
 「じゃますんなよな。」

 と、ボソッといったロンの言葉には耳を疑ったけど。

 ワタワタしてるのはどうも私一人みたい。

 はずかしい。穴があったら入りたいよぅ〜。
 
 「これ以上、暗いところにいってどうするんだ。」

 ロン、そんな問題じゃないから。
 
 そんな私たちのやり取りを冷静に見ながらロールは言う。

 「とりあえず、縄を解いてください。ニコ。」

 ニコ?ニコもここにいるの?

 「ハイ。」

 ニコは何かしら呪文を唱え始めると縄がひとりでに解かれた。

 「これは術がかかってるので呪文以外は取れないのよ。ごめんね。」

 そういって私の両手をさすった。
 
 血がにじんでるのも見て「ごめんね。」とつぶやきながらニコは私の両手に手をかざしまた呪文を唱えた。

 すると、私の両手の傷があっという間に消えた。

 何が何だか、わからない私はただ呆然と見てた。

 急に呆然とする私を軽々と横抱きにされた。

 「ちょっと、ロン、歩けるよ。」

 またもや、わたわたしながら降りようとしても力強い腕の中では効き目が無く。

 「だめ、ヒナタはすぐに無理するから。」

 飄々としながら言われてしまった。ここは、おとなしくしてた方がいいのだろう。

 きっと聞いてもらえないだろうから。

 それに、ロンの腕の中は心地良い。

 ロンの胸にそっと顔を当ててたら、安心たせいか深い眠りについてしまった。


 

 




  









    






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