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昼休み。
医務室をノックする。
「はいどうぞ?」
「葵〜。ご飯食べよう〜。」
最近、昼ご飯も一緒に食べようと直がやってくる。
なんなんだろう、この人は。一緒に食べる人いないのだろうか。
「私はお弁当持ってきてるので。」
「オレももってきたよ、ほら。」
コンビニで買ったパンを並べた。まったくここの人たちは・・・。
「ここの会社は食事管理とかはどうなってるんですか?
栄養が偏ってる人が多すぎます。だいたい社員食堂がひどすぎます。
こんなに大きな会社なのに高いし栄養バランスはまったく考えてないし、
狭いし。今どきあんなにひどいところはありませんよ。
社員の食事とかもきちんとしていかないとこれじゃあ能率もよくなるはずがありません。」
直にとっていたいところをつかれた。
今、会社事態をこっそりとかえようとした動きをやってる張本人であった。
古臭い体制から会社の作りなどを隙をみては改善していっていたのだ。
食堂に関してはなかなかおえらい方が改造に関していい顔をしないため、
話が止まっていたのだ。
「そうだよなぁ。ひどいよなぁ。オレもおいしいご飯がたべたいよ。」
そういいながら葵のお弁当を覗く。色とりどりでとてもおいしそうだ。
「これはあげません。」
そういって隠された。
「能率が悪くなるとか栄養が悪いとか何かデーターがあれば動くんだけど・・。」
ぶつぶつ言いながら直が考え込む。
「食事がどんなに大事かデーターがほしいのですか?どこかの学会の発表の資料であれば
ありますけど。それと社員の血液データがあるのでどれだけ成人病に近いかわかりやすく
年齢や男女別でグラフでまとめてますよ。」
「そんなのあるの?」
「私をなんだとおもってるんですか。皆さんの健康管理をするのがお仕事です。」
「今までどうしてそれを出さなかったの?」
「出して何度も訴えてきましたが毎年無視されてます。だからといってやめたわけでもないのですが。」
だれだろう、握りつぶした人物は。
会社のおえらい方も掃除したほうがいいな・・・。
まあそれはのちのちまとめてやろうか。
とりあえず出来ることからやらないと。
直が考えてる間に葵はデーターをSDカードにいれ学会の資料はクリアファイルに入れてきた。
「どうぞ。」
まったく、仕事がはやいな。うちの秘書にほしいくらいだ。
「あなたがどんな仕事をしてるのかわかりませんが、個人情報のこともあります。
この情報は他にもらさないで下さい。いいですか?」
「オレを信用してるの?」
「あなたは会社を良い方向にかえようとしてるのでしょ?それにはこのデータが
必要なんでしょ?私が今まで訴えてきたことに耳を傾けてくれました。
なのでこの件については信用します。」
「わかった。ありがとう。期待に添えられるようがんばるよ。」
「だけどあなたもほどほどにして下さいね。またあそこで倒れてたら困ります。」
「もしかして心配してくれるの?」
「健康管理は私の仕事ですから。」
まったく、つれないな。まあ、信用してくれただけでも一歩進んだよな。
「お昼の時間がなくなる。早く食べよう。」
葵のおいしそうなお弁当を横目にパンにかぶりついた。