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一条グループ。

 日本でも指折りの大企業。

 ホテル経営をメインとしリゾート地やアミューズメントパークなども手がけている。

 最近では海外にも拠点を置いて開発している。

 先々代はイギリスの貴族出身で

 日本に旅行に来た際、日本人女性と恋に落ちそのまま日本に住み着いたというのは

 業界ではかなり有名な話。

 自分の祖先が大恋愛をしてるのを見て育ってるためか、

 一条家は皆情熱的な人間が多かった。

 直はこの一条グループの継承者で、

 現在父のもとであと継ぐべく働いていた。

 情熱的な家族を見て育った割には冷めたところがあり

 自分は家族のようにはならないと幼い頃から思っていた。

 そう、葵にあうまでは・・・・。

 「葵、おはよう。」

 毎朝、毎朝、彼女のために睡眠時間を削って会いにいっている。

 「おはようございます。」

 彼女はそんなことすら知らない。自分が何者かも知らないのだ。

 どうすればこっちを向いてくれれうだろうか。

 どうすれば自分に笑いかけてくれるだろうか。

 どうすれば彼女の視界に入れるのだろうか。

 「葵、どうしたら僕と付き合ってくれるのかな。」

 「どうして私があなたと付き合わなくちゃいけないんですか?もっと、いるでしょう?」

 なんで、こんなに彼女は頑固なんだ。

 「僕がすきなのは葵なんだ。なんで、他の人とつきあわなくちゃいけないんだ。」

 「だって、何人か女の人がたずねていらっしゃいましたよ?私のものだーって。」

 いったい、誰なんだよ、人の恋愛邪魔するヤツは。

 過去の女だろうか。だけどちゃんと今まで別れてきたし。

 今まで適当に恋愛してきたツケがまわってきたのだろうか。

 ここまで、切羽詰ったのは生まれて初めてだったのだ。

 「オレは誰のものでもない。葵のものだ。」

 「勝手に私のものにされても困ります。どうしたんですか?急にオレなんていったりして。」

 つい苛立ちがでて自分が出てしまったようだ。

 「もともと自分のことはオレっていってる。人前ではなるべく丁寧に言葉を選んでるから・・・・。」

 「そうですか、考えながら話さなければいけない立場なんですね。」

 かなわないなぁ。葵には。

 「うん、やっぱり葵がほしい。付き合ってくれ。」

 「却下です。」

 「なんで、だめなんだ?誰か付き合ってるヤツがいるのか?」

 直は一番ききたくて一番ききたくないことをきいてしまった。

 「別にいません。私は自分が好きな人としか付き合いませんので。」

 「そうか、じゃあまだ望みがあるな。」

 「ないと思いますよ。」

 「なんで?」

 「男前な人とは付き合えませんので。」

 「なんで?普通、いい男と付き合いたいのじゃないか?」

 「だって苦労するじゃないですか。それにそんな人が自分を好きといっても信用しきれないです。」

 ここまで言うのは過去になにかあったんだろう。追求するのはよしたほうがいい。

 でもここであきらめるわけにはいかない。

 「じゃあ、君がオレを信じれる男とみなしてくれればつきあってくれるんだな。」

 「・・・・・・・・。無理だとおもいますよ。」

 「オレはやる前にあきらめるのが一番嫌いなんだ。それに自分が葵を裏切らない自信もある。」

 そうだ、それには自信がある。

 「まあ、あとでわかるよ。オレでよかったってね。さ、そろそろ仕事の時間だ。」

 「そうですね、ちゃんと仕事してくださいね。」

 オレがちゃんと仕事しないとこの会社は機能しなくなることはきっと知らないだろうな。

 「じゃあ、ちゃんと仕事できるように食事行こうよ。」

 「却下です。まったくこの人は・・・・。」

 ぶつぶつ言い出したので退散することにした。

  









    






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