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大きい男二人。私の狭い部屋にいるととても窮屈。

 どうしてこんなことになってるんだろう。まったく。

 お茶の用意をしながら二人の様子を垣間見た。

 二人とも黙ってにらみ合ってる。なんだかなぁ。

 お盆に紅茶セットを持ってきてテーブルの上に並べる。

 コポコポ音を立てて入れてると

 「何だかいいにおいだな。」

 「一条さん、お仕事忙しいみたいだから疲れが取れるハーブティーにしました。

 苦手ですか?」

 葵のやさしい心遣いに満面の笑顔になる。

 その笑顔痛いです。

 「大丈夫だよ。ありがとう。」

 「一条・・・・・。ってもしかして葵に毎日告白してた一条?」

 いきなりリョウの発言に葵が慌てて止める。

 「きゅ、急に何いってるのよ。失礼でしょ。」

 「そうだ、だから君にはこれ以上オレたちに間に入ってほしくない。」

 一条さんまでなに言ってるのよ〜。

 「ふぅ〜ん。でも、葵は良い返事はしてないはずだ。」

 「彼女はオレのことが好きだ。目を見たら分かる。」

 な、なんてオレ様なの〜!!

 びっくりして真っ赤になってるとリョウが大声で笑い出した。

 ちょっと、笑い事じゃありませんが。

 「葵、あなたの負けだね。いい加減、降参したら?」

 負けって、負けって・・・・。違うもん。

 首を横に振って否定してるとリョウは優しい目で私を見た。

 「ねえ、葵。あなたはもう答えがでてるでしょ?どうしてそんなに抵抗するの?」

 そんなこと言ったって。

 「あなたは、私に『人はだれでも幸せになれるよ。』って教えてくれたじゃない。

 なのに、自分はどうして不幸になろうとするの。」

 そういって頭をなでてくれた。

 「もう、過去から逃げないでさ、前に進んでもいいと思うよ。」

 過去から逃げる・・・・。そう、私は彼の呪縛から放れようとしなかった。

 「じゃなかったら、私が彼をもらうからね。いいの?」

   その言葉に、一条さんがびっくりしてた。そりゃそうでしょ。

 リョウはニコニコしながら一条さんの側に寄っていった。

 一条さんが微妙な顔をして私を見つめた。その顔がおかしくって笑ってしまった。

 「一条さん、葵がだめなら私がいますから、ネ。(ハート)ここに連絡頂戴ね。」

 そういって名刺を渡して去っていった。

 一条さんは呆然と名刺を見ていた。

 その姿がやっぱりおかしくって笑ってしまった。

 困った顔になっていた彼を見ながら私は深呼吸をして言った。

 「一条さん、これから私の話を聞いてくれますか?」

 あのことを話すのは正直怖い。思い出すだけで震えがくる。

 だけどこのままじゃいけないんだ。

 葵の強い意思のこめた目を見て直も真剣な表情でうなずいた。

  









    






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