11
暖かい手をとるべきか、とらざるべきか私にはわからない。
ただこの手をとることが私にとって幸せなんだろうなと頭の隅で冷静に分析していた自分がいた。
「ごめんなさい。離して下さい。」
私はそっと直の両手を離した。
「お気持はうれしいです。だけどやっぱりあなたにこたえることは出来ません。」
「どうして?あれは君の本心じゃないのか?」
直の言葉がとても痛い。
「本心かもしれませんが、だからといってあなたと付き合うことはできません。」
「理由をきいていいかな?」
理由を言ってしまえばどんなに楽か。
「ごめんなさい・・・・。」
おねがい、これ以上私の中に入ってこないで。
直は下を向いてしまった葵をこれ以上問い詰めることをあきらめた。
「あやまらないで、葵は何も悪いことしてないから。無理に聞くつもりないから。」
そういってあなたはいつも私に逃げ場をちゃんとくれる。
安心して笑顔がこぼれた。
「いつもそんな顔しててほしいなぁ。」
そういってホッペにキスを落として直はさわやかに笑った。
「な、なにするんですか!!」
「昨日お世話してあげたお礼ぐらいもらってもバチはあたらないでしょ?」
「もういいです。帰ります。お世話になりました。そしてご馳走さまでした。」
まったく、いい人とおもったらすぐにこうなんだから。
すっかり怒ってしまった私に何度も謝ってきて結局彼に家まで送ってもらうことになった。
車を見てびっくりした。
あんまり詳しくないけどこれって外車でしかも高級車だよね。
この人って何をしてる人なんだろう。
疑問には思ったけど家の前に立っている人物を見たらすぐに忘れた。
「知ってる人?」
リョウに気づいて私にたずねた。
「ああ、知り合いです。あ、ここでいいです。ありがとうございました。」
そういって私は車から降りた。
自分だけが降りたつもりが彼も後ろをついてきて手を握る。
びっくりした。手をつながれるとは思ってなかったから。
「あいつにはやらない。前にもそういったろ?」
握る手に力が入る。
「何いってるんですか?」
なんで。そんな怖い目でみつめるの?
「離してください。」
「いやだ、君はあいつと約束でもしてたのか?」
約束?そんなもんしてるわけがない。
「別に約束なんかしてません。」
「じゃああいつはなんでここにいるんだ。」
「家になんども来たことがあるから・・・。」
友達だもの。
「あいつは部屋に入れてオレは入れられないのか。」
そんなこと言ったって。
「おい、お前何やってるんだ。」
リョウが彼と私がつないだ手を離し私をかばうように立った。
二人はにらみ合うように立った。