第一章 5




  さすがに長時間バックに制服を入れてると、しわになるかぁ。

  しわを伸ばしながら鏡の前で立ってみる。



  その時、扉のほうからノックの音がした。

  「どーぞ?」

  といいながら扉を開けるととてもかわいらしいめがねをかけたメイドさんが立っている。

  「失礼します。お部屋に入ってもよろしいでしょうか?」

  にこやかに言われたのでつられてニコニコしてしまった。

  部屋に入り私を見るなり、

  「はじめまして、ヒナタさま。わたくし、ニコと申しまして、

  本日付よりヒナタ様専属のメイドとなりました。

  どうぞ、何なりとご用件をもうしつけくださいませ。」

  と、深々と礼をしながら挨拶をした。

  「はじめまして、菊池日向といいます。ええと、

  そんなメイドさんつけてもらうほどの人間じゃないのですが。

     ううん、困ったなぁ。私、今までも一人で身の回りのことやってきたんで

  メイドさん付いてもらわなくても大丈夫ですよ。」

  礼をしながらそう話すと彼女はとてもびっくりした表情になった。

  「ああ、貴方がいやだとかそんなんじゃなくって

  いままでそんな習慣がなかったから。

  ほら、着替えもひとりで出来たでしょう?」

  と、制服を見せた。

  ニコはかなり驚いた。今まで彼女はいろんな人専属のメイドをやってきたが

  ここまでメイドのことを思って話す人間はいなかった。

  やってもらって当たり前という人間ばかりだったのだ。

  予言の少女はやはりこの子だろう・・・。

  ニコが黙ってマジマジと日向を見つめはじめたため、

  日向は相手が怒ったと勘違いをし、

  どんどんわけわからない言い訳をし始めた。

  「それにね、今まで部活でもどっちかというと先輩の世話をしたり

  学級委員では小間使いのようにこき使われ、

  人の世話ばっかりしてたからそっちのほうが楽なの。

  だから、ね。ごめんなさい。」

  と、そこまで話したところでニコは日向のことがすっかり気に入ってしまった。

  「でも、それでは私は職を失ってしまいます。

  どうか、ご慈悲を。」

  うううん。どうすればいいのか。こまったなぁ・・・・・。あ。

  「じゃあ、私の教育係は?もしくはお話し相手。

     ここの世界のことはよくわからないから。年も近いみたいだし。

  私、17歳なんだ。あなたは?」

  「わたくしも17歳です。いっしょでございますね。」

  「じゃあ、こっちに来てのはじめての友達になってくれる?

  同じ年ということで。それならうれしいなぁ。」

  「そ、そんなぁ。」

  「ねね、決まり。メイドじゃなくて教育係兼おともだち。

    だから、敬語はなしね。人前はあなたの立場があるから

  敬語でもしょうがないけど。なるべくなら普通に話してほしいな。」

  ニコはしばらく悩んだ挙句、

  「わかった。よろしくね。」

  「よかった〜。私、どうしようかとあわてちゃったよ。ふふ。」

  「じゃあ、衣装は着替えたようだし・・・・。って、日向その格好で行くつもり??」

  制服をぐるりと見渡した。しわもさっきよりはましだし、

  そんなにスカート丈も短いわけでもないし、ハイソックスは汚れてないし、スニーカーも洗ったばっかできれいだし。

  「え?だめ?一応制服だから正装に近いものだしいいかなって。」

  「あのね、この国ではあまり女性は足を出さないのよ。

  あなたの足は綺麗だから出してもいいと思うけど、男性が目のやり場に困ると思うのね。」

  「でも、ヒラヒラ着る勇気はないよ。いいよ、どうせ馴れてるし。」

  「本当にいいのね。じゃあ、陛下のところへ案内するわ。」









 






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