第二章 11





  

日向が捕まっている頃、王宮では大騒ぎだった。
 
 「いないっていったいどういうことですか。」

 この場にいるもの全員震え上がっていた。

 いつも冷静なロンの表情が、とても恐ろしかった。

 口調はいつものとおりだが、ただならぬ空気をまとっている。

 朝からヒナタの姿が見えないと報告があった。

 最初はまたどこかに遊びに行ったんだろうと誰もが思ったのだか、

 ロンだけはいやな予感がし、もう一度探すように命じた。

 だが、結局誰も見つけることができなかったのだった。

 予感が確信にかわった。

 最近日向を避けていたのではなく、なぜか近寄れなくなっていた。

 日向のもとへ行こうとすると何かしら邪魔が入る。

 まるで、誰かが操っているかのように。

 日向にあえないイライラが爆発しそうになっていた矢先、変なうわさが王宮で流れた。

 もともと婚約の話はある。だが、それは今回に限ってではなく、よく来るのだ。

 だが、今までの王もそうだったが、妃は自分が選ぶつもりだった。

 身分も関係なく一生愛し続けるものと結婚するつもりだった。

 なのでいつものように流していたが・・・。まさか、ヒナタが聞いていたとは。

 しかもそのことを説明することさえ出来ない状況になるとは。

 おかしいと思い、ロールとともに調べていた。

 どうも、魔力が働いているようだった。

 この世界には魔力が使える人間は限られている。

 神官の位があるものと、東西の魔女といわれるもの。

 東の魔女は東の大国スターターに一人。

 西の魔女は西の大国フォレットに一人。

 二人とも一子相伝で誰なのか分からないように生活している。

 魔女は神官とは比べ物にならないくらいの魔力があり、

 それぞれの国に何かがあったときのみ出現してくるという。

 ヒナタのことを予言したのも西の魔女だった。

 

 神官の中でももっとも魔力をもっているロールが結界をはっていたのに、

 最近王宮内で魔力を使った形跡があった。

 特に、ヒナタの周りで。

 そこから調べていくとある人物が浮かび上がってきたのだ。

 しかし、どうしても信じられない。

 それになぜそうなのかも証拠が取れていなかった。

 なので、その人物を泳がせていたのだが、ヒナタがいなくなったとなれば

 そんなことを言っていられない。

 一刻を争う事態となったのだ。

 ロンはその人物を呼ぶことにした。


 






 はぁ〜。何時間ぐらい経ったかなぁ。

 おなか空いてきたなぁ。

 でも、ここって不思議だなぁ。寒そうだけど寒くない。

 妙に心地いいんだよね。だから、さっきからどうも眠くって。

 ふぁ〜。

 数回目のあくびをする。

 どうも、危機感が薄れてきてるらしい。いかんいかん。

 なにか、ロープを切れるやるとかないかな。

 ごそごそと芋虫のように動いてみる。

 ろうそくを使って燃やしてみるとか。

 火事になったらやばいか。

 ガラスとか鏡とかあれば・・・・。あ、あった。

 祭壇の上にあった鏡を倒して下に落とす。

 お、いい感じにわれた。これならロープ切れるかな。

 鏡の破片を後ろ手に持ってこすってみる。

 む、難しい。けど、今はこれしか方法がないんだ。

 今、出来ることに集中するしかない。






 

 コンコン。

 「入れ。」

 「お呼びでしょうか、陛下。」

 「ヒナタをどこにやった。返事次第ではお前を殺す。」

 そういって相手の喉元に剣の先を当てる。

 「何のことか私には分かりません。私もヒナタ様を探してるのですが。」

 「お前が、魔力を使って操っているのはわかってるんだ。

  ヒナタになにかあったらお前を許さない。」

 剣先をさらに喉元に突きつけた。

 「それは国王としての発言ですか?それとも一人の人間として?」

 剣を突きつけられているにも関わらず、笑顔で話す。

 「お前に関係ない。」

 お互い見つめあう。

 「こんな時でも冷静にならないと、もしこれがスターターの人間の仕業だったら

  どうするんですか?」

 「殺すまでだ。」

 ヒナタには見せたことがない表情。人間とは思えないほど冷酷な表情だった。

 一人の人間のためにここまで冷酷になれるとは。

 いつも側にいたロールも初めてみた表情だった。

 しばらくロンの目を見ていたが、やがて口を開く。

 「あなたの気持は十分見せていただきました。

  わかりました。ヒナタのところへ案内しましょう。」

 そう、にっこり笑ってニコは部屋を出た。

 

 




  









    






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