第一章 14




     久しぶりのあの夢を見た。

  そう、私を何度も何度もよぶ。

  その声に聞き覚えがあるような・・・・・。

  と考えたら目が覚めた。

  まるで考えることをやめさせるかのように。









  朝から雲ひとつ無い快晴だった。

  昨日の出来事が嘘のようだ。

  私の中ではまだ引きずってるけど

  それを人に気づかれないように今日を乗り越えなきゃ。

  暗い顔をみんなに披露するわけにはいかない。

  いつもよりも早くに起きた私は洗面を済ませるとジャージに着替え

  武道場に向かった。

  悩むことがあるときは竹刀を振ってたほうが良い。

  体を動かしたほうがやらなきゃいけないことに集中できる。

  素振りをしてるとロンが来た。

  ここに来るのは珍しい。

  「どうしたの?」

  「それはオレのセリフ。こんな朝早くから稽古してるなんて。

  足のほうは大丈夫?」

  あ。忘れてた。

  思い出したらズキズキ・・・・・と痛み出す。

  「ちょっと見せて・・・・。あ〜。やっぱり腫れてる。

  まったく、何やってんだよ。こんなに腫れてるのに練習するヤツがいるか。」

  コツンとおでこを軽くたたかれる。

  「今日、大丈夫か?」

  「大丈夫、大丈夫、このくらい。別に骨折してるわけでもないんだから。

  それに試合とか出るわけじゃないし・・・・・。

  今日は歩いたり座ったりお辞儀したり手を振ったりの繰り返しでしょ?

  そのくらい大丈夫よ。」

     と言ったものの正直痛みがひどい。

  きっと重い衣装を着てるからかな。

  ドレスはそれはそれは綺麗なものだった。

  結婚式みたいに着飾ってる。

  きっとこっちの世界ではこれが当たり前なんだろうな。

    ううん。染まりたくないね。

  髪もいつもは下ろしてるか一つに結んでるかなのに

  綺麗に編みこみされて、飾りもつけられ自分の髪が自分のじゃないみたい。

  化粧も嫌がったけど拒否権はなし。

  今日ぐらいいうことをきくか。はぁ。

  ニコは目をキラキラさせながら

  「今までで一番の出来よ!!!」

    と興奮してたけど私にはさっぱりわからず。

  鏡を借りようとしてもそのまま儀式に入ってしまった。







     大きな扉の向こうに赤いじゅうたんがひいてありその上をゆっくりと歩く。

  大きな祭壇の前にはロンがいた。

  知ってる人の顔を見るとほっとする。

  ちょっと表情を緩めロンを見つめた。

  ロンもしばらく私を見つめた。

  お互い見つめ合って固まってしまう。

  ロンてやっぱり王子様だなって。(王様です。)

  どんな格好してもいい男はいい男だけど、

  やっぱり正装が一番似合う。似合いすぎる。

  これが彼の世界なんだな・・・・・・。



    彼に誓いの言葉をささげ彼も私に対し誓いの言葉をささげる。

  ようはお互い助け合って良い国にしましょうってこと。

  誓いの言葉が終わると国のお偉いさんが列をつくりその中を歩く。

  ひとりひとりに挨拶をし握手していく。

  これがなかなか終わらない。

  みんな何かしら話が長くなるから。

  あんまり長くなるとロンが助けてくれるから助かったけど。

  やっと最後の一人と話を終え、ロンとともに廊下にでる。

  扉が閉まった瞬間、ため息が。

  「疲れたか、大丈夫か?」

  ロンはいつもと変わらない表情。やっぱ、日ごろから王様やってると

  慣れっこなんだよな。

  恨めしい表情してたらしく、

  「オレを恨んでもしょうがないぞ。テラスまで歩けるか?」

  「歩かないとお姫様抱っこされるから歩く。」

  とヤツより早足で歩いていった。

  「よくわかってるな。」

  と後ろから聞こえてきたので睨んでやった。

     ロンのエスコートのもとテラスに出る。

  大歓声が上がる。

  みんなが手を振ったり旗を振ったりしてくれる。

  ふと兵隊に抑えられてる子供が目に入った。

  町に出たときのチビちゃんだ。

  あわてて下まで降り兵隊を止める。

  「こんな子供に何が出来るというの。離してあげて。」

  彼らは私がまさか下まで降りてくると思わなかったらしくびっくりしていた。

  国民も急な私の出現にびっくりしあんなに大きな歓声が上がってたのにもかかわらず

  しんっと静かになった。

  「ボク、大丈夫?」

  「うん、大丈夫。予言のショウジョはおねいちゃんだったんだね。あとでママに聞いて

  びっくりしたよ。」

  そうか、お母さんと会ったときはフードはずしてたから、すぐに気がついたんだろうな。

 「ボク、うれしくってうれしくっておねいちゃんにお花の冠作ってきたんだ。」

  「ありがとう、すごいね。ボク一人でつくったの?」

 それは白い花で作られた花冠だった。とってもかわいらしい。   「ううん、ママに教えてもらったの。でも、難しいところ意外はボクがつくったんだよ。」

  「そっかー。ありがとう。大事にするね。」

  「うん、ボク、頭にのせてあげる。」

  かがむとその子が一生懸命に背伸びして頭にのせてくれた。

  私は子供を抱っこしてテラスに戻った。

  「国が沢山あると争いが出てしまうことはよくあります。でもやっぱり人は

  争っちゃいけないと思うのです。争い・憎しみからは何も生まれません。

  子供達の笑顔はそんな憎しみや争いの心を洗い流してくれると私は思っています。

  子供達がいつまでも笑顔が耐えないように私も努力します。

  皆さんもどうか私に力をかしてください。」

  あんなに何を言うのか考えてたのに結局これだけになった。

  だけどみんな笑顔と拍手で答えてくれた。

  ロンも珍しく笑顔になっている。

  この笑顔をずっとずっと守りたいと心から思った。

  









    






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