いつも夢の中で私を呼ぶ声がする・・・・・・。

 それはとても暖かく

 とても切なく、

 とてもいとしい声。

 その声はだんだんと大きくなり

 いつしか私の心に住み着いた。











   第一章 1



 「めーん!!」

 バッと三人の審判が赤旗を上げる。

 「メンあり、勝負あり!!」

 お互いに礼を、審判に礼を神棚に礼をして私は監督と友人の下に駆け寄った。

 「日向〜〜!!おめでとう!!」

    「おつかれさま!!」

 「優勝だ!!」

 ぞれぞればらばらなことを言ってみんなが私の頭を面の上からバシバシとたたく。

 「ありがと〜うれしいよぅ。」

   にへらっっと笑いながら友だちに抱きついた。










   私、菊池 日向(きくち ひなた)17歳、剣道でインターハイ個人戦の部優勝しました。

 ここまでそりゃー血の出る稽古をしましたよ。

 女捨ててたところもあり。

 周りの友だちは次々と彼氏を作り高校生活をエンジョイしてた時、

 臭い防具を着て毎日頑張りましたとも。

 でもそんな生活は嫌いじゃなかった。

   心と体を磨ける武道は私にとってかけがえの無いものだった。

 父は剣道の監督、母は合気道の監督だった両親のもと、

 私は当たり前のように武道をたしなんで育った。

 その両親も数年前、交通事故に巻き込まれ他界。

 家族を失った私にとって武道場は家と同じ空間。

 武道場で頑張れば頑張るほど両親がほめてくれそうで。

 両親の笑顔がみれそうで。

 だからみんなとは少し違った生活になってしまっても

 私はなんとも思わなかった。





 そう、あの世界に行くまでは・・・・・。

















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