第一章 7




  彼の話を聞いた後、どうやって部屋に帰ってきたのか覚えていない。

  ぼーっとしてたらニコに見つかってオロオロされた。

  病気にかかったと思ったらしい。

     私に国を支えるなんて力があるのだろうか?

     そんな大それたこと本当にできる?

     失敗したからといってごめんなさいじゃすまない。

  人の生活や命までかかってるんだから。

  簡単に答えをだすのはあまりにも軽率じゃない?

  それに国民とっていもどんな人たちとかさえも知らないし。

  知らないし。

  ・・・・・・・。

     知らないならみてみよう。

  会って、話して感じてみるのが大事と思う。

  「ねえ、ニコ?お城をでたら城下町ってあるの?」

  「あるよ。ここの城下町はいろんなものがそろって

  みてまわるだけでも楽しいんだ〜。どうして?」

  「うん、みて見たいなって思って。しかも、

  私ってばれないように見てみたいんだ。」

  「な、な、な、なにいってんのよ〜!!!」

  廊下にもニコの声が響いたらしい。

  あわててコーナンが入ってきた。

  「どうされましたか?」

  「どうもこうもヒナタが城下町に行くって・・・・。」

  「だってね、この国のことを知るのに良い方法でしょ?

  この国のことを内面から知らないで国を支えるとか

  そんな答えは出したくない。無責任だと思うんだ。ちがう?」

  コーナンはびっくりした。

  青い顔をして部屋を出て行きやはり少女には無理かと思いきや

  自分が何をするべきか考えている。

  見かけよりもしっかりしているのかもしれない。

  ふと、少女の顔を見ると瞳には強い意志みられた。

  「しかし、城下町が安全とは言い切れません。また、やつらが襲って来たら・・・。」

  「ああ、あれくらい自分で処理できるよ。最初だって疲れてなきゃ倒れなかったもん。」

  「ええ??ヒナタが本当に倒したの?動物が助けたんじゃなかったの?」

  「一応、護身術は身に着けてるんだ。これでも全国大会優勝者よ。」

  「しかし・・・。」

  「じゃあ、こうしよう。今からあなたが選ぶ腕のたつ人と対戦して

  勝ったら行ってもいい?ちゃんと変装もするから。」

  まさか、国王も承諾するとは思わなかった。

  きっと無理だと思ったんだろうね。

  でも、がんばりましたよ、わたくし。

  ムキムキ筋肉のお兄さん5人相手に素手でやりましたよ。

  合気道なら自分の力は必要ないじゃない?

  相手の力を利用して気の流れを操って相手を倒すものですから。

  合気道を知らない相手にこれをやるのは申し訳なかったけどさ。

  だって、フェアじゃないような気がして。

  だけど約束は約束。

  ニコに変装手伝ってもらった。鬘を被ってフードつきのコートで十分

  黒髪と黒い瞳は隠せた。

  心配そうなニコを尻目に鼻歌歌いながら城をでましたとも。(ごめんね。)

  異世界に来て驚くことばかりだけど楽しむことも必要じゃない?

  途中、鳥らしきものやリスらしきものに声かけておしゃべりしながら

  城下町に行った。









  城下町は人でいっぱいだった。

  あふれてるという表現が正しいかな。

  あちこちで呼びかける声がする。

  すごく活気がいいなぁ。好きだなぁ。こんな感じ。

  きょろきょろして歩いてるとドンっと足元に何かがぶつかった。

  3歳ぐらいの男の子。

  「ごめんね。ぶつかっちゃった。大丈夫?」

  としゃがみながら声をかける。

  すると、

  「おか〜しゃ〜ん。」

  泣き出しちゃった。ああ、もしかして迷子?こんだけ人が多ければしょうがないよねぇ。

  「よし、じゃあおねえちゃんが一緒に探してあげよう。」

  と手を引きながら一緒に探してもなかなか見つからない。

  ううん。かくなるうえは肩車で。と、持ち上げた瞬間横から人の手が。

  な、なにすんのさ〜!!人さらい?

  と叫びそうになったけど声が出なかった。

  だって、その手はなんと国王のものだったから。

  彼はその子を肩車して大きな声で親を探し始めた。

  すると、遠くから坊やの名前を叫んで駆けつけた人がいた。

  無事、親子対面できたみたい。

  私達はお礼にと、そのおかあさんがやっている喫茶店みたいなところに案内された。

    ・・・・・・・・・・・。

  なんで、あなたがこんなとこいるのさ。一応、変装してるみたいだけど。

  「一応、護衛のつもりです。強いといったからって完全に安全とはいえないですし。

  町で迷子にでもなったらどうするつもりでした?」

  むむ、私の心が読めるのか。こやつ。

  「あなたが考えてることが顔に出すぎなんです。なんでこれであんなに強いのか不思議ですよ、全く。」

  むむ、人が気にしてることを。つうか、この人綺麗な顔して毒はいてますが。

  「毒でもなんでもないですよ、事実です。」

  ムキー!!!け、けんかうってる!!

  「だいたいこんなところに王様がいていいんですか?お付の人が探してるんじゃないですか?」

     「大丈夫です。私はあなたと違って信頼性があるので。」

  ムキー!!!さっきまではあんなに紳士的だったくせに。

  「あ、あのね・・・・」

  「おねいちゃん、食べて!!」

  とさっきの男の子がお母さんと一緒に飲み物とフルーツを持ってきてくれた。

  見たこともないものだけどおいしそう。

  「ありがとうね、いただきます!!うん、おいしい。初めてこんなにおいしい果物食べたよ。」

  「お口にあってよかったですわ。彼氏さんとゆっくりしてってくださいね。」

  「え、ち、ちがいます。」

  と訂正したけどにこやかに奥に引っ込んだ後だった。

  ああ、違うのにぃ・・・・。

  「この食べ物がどんなに高価なものかわかりますか?」

  「え、そうなの?道理でおいしいと思った・・・・。」

  「この国の人間はお礼のために自分がどんなに貧しかろうと

   心からお礼をする。人がよすぎるんです・・・・。」

  「うん、なんとなくわかる気がする。町を歩いてても

  あたたかい人情みたいなものがよく伝わった。

  国民がこんなに心が豊かなのは国が良い証拠だよね。

  きっと王様が頑張ってるんだよね。」

  「ありがとう・・・。」

  彼はとても照れたようにそっぽ向いてボソッとつぶやいた。









    






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