最終章 2





 





 
 


 みんなの話し合いが終わった頃、私はひとりまだ屋上にいた。

 カイとニコは用事があるからといって出て行ったため、

 私は一人で座りこんでこの国を見つめていた。


 
 夕焼けに染まった空をぼんやりと眺める。

 オレンジだけじゃなくってピンクにも見える。不思議だなぁ。

 なんてバカみたいなことを考えていた。

 そう考えることで一つの不安を心の中から吐き出していた。

 「ヒナタ。」

 後ろから、私を呼ぶ。

 その声の主は、後ろから包み込むように座るとマントで抱きしめた。

 いつも私が考え込んでいると後ろから優しく抱きしめてくれる。

 私をかばうのでなく、やりたいことを後ろから支えてくれるロンの

 気持ちを表しているみたいだ。

 「冷えちゃうよ?」

 「ありがとう。」

 あたたかい声と、その存在は私を切なくさせる。

 ロンの手を握りながら後ろに少しだけ体重をかけた。

 「あったかい・・・・。」

 このぬくもりが無くなってしまうのだろうか。

 私にとってこの場所が何よりもたいせつな場所となってしまった今となっては

 ここから離れてしまうことが何よりも辛い。

 「ねえ、ロン。私・・・・。」

 「もう、何も言うな。」


 抱きしめる手を強め、私の肩に頭を乗せてくるのはロンの癖。

 そんな癖も愛おしい。


 私は空を見上げたら、いつの間にか一番星が見えた。




 一番星。



 どうか・・・・・・。





 どうか・・・・・・。









 











 スターター国での出来事から1ヶ月。

 私の傷もすっかり癒えた。

 フォレット国に戻ってきて、今は以前の生活に戻っている。

 いや、それは違うか。

 スターター国は、アレン王子を中心にルルさんたち反乱軍の人たちと一緒に

 国を底から変えていっている。
 
 もちろん、リリも協力していた。

 彼女は、自分の行いを謝罪し、死罪でもなんでも受けるとアラン王子に言ったが、

 罪を償うというならこの国のためになるように償ってほしいと

 得意の化学魔法や薬で傷ついた人々のために働くように命じた。

 今は、魔女というより医者といったほうがいいぐらいの働きをしている。
 
 私が怪我したときも適切な処置と看護をしてくれた。

 傷の痛みをしっている彼女ならいい医者になるだろう。

 リリのほうからも時々手紙が来た。

 大変だけど、今まで一番生きている感じがするとよく手紙に書かれていた。

 それにたくさんの仲間ができ、ルルとも和解して一緒に暮らし

 ちょっとづつだけど、自分が出せるようになってきている。

 毎日毎日、汗を流しながら働き、よく笑えるようになってきているようだった。

 もう一人なんだという寂しい感情はみんなのおかげでなくなったと
 
 幸せそうに書いてあった。

 その手紙をよく大好きなテラスで読んではつぶやく。

 

 「リリ、よかったね。もう大丈夫だね。」


 




 
 その手紙をそっと閉じたとき、


 後ろのほうから私を呼ぶ声がした。

 
 「ヒナタ、ちょっといい?」



 ニコの声だった。


 振り向くと、いつもニコニコしていたニコの顔が真剣で、

 何を言いに来たのかなんとなくわかってしまった。


 その時が、きたのだ。



 

 

 






 
 







 

 




  









    






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