第四章 12





 



 城内はなにやらあわただしい様子を見せていた。

 その間に、ニコはロールとともに城内へ潜入してリリを探し出していた。

  

 誰もがロンを止めたが、どうしても安全なところでとどまることが出来なかったため、

 ルルとともに行動をすることにした。

 「ルル、現状は。」

 城壁の下にある林で新しい情報を取りに行ったルルと二人で落ち合った。

 「ちょっとまずいことになっています。ヒナタが完全に捕らわれています。

 野獣のほうは姿が見えません。ただ、動物達が北の棟のほうへ集まっているところを見ると

 ヒナタはそこにいるかと思います。」

 やっぱり捕らわれたか。

 でも、カイの姿がないという事はきっと・・・。

 ガサッと後ろで葉がこすれる音がした。
 
 とっさにルルと刀を構えると、カイが姿を現した。

 「カイ・・・。

 無事だったのか。よかった。」

 カイの首に抱きつくとカイは甘えた様子で頭に自分の鼻をこすりつけた。

 「一緒にヒナタを助け出そうな。」

 ギュッと抱きしめ、カイと見つめ合った。

 「カイがここにいると心強い。わかる範囲でいい。答えてくれ。」

 そういうとカイはうなずいてくれた。

 カイとルルの情報を集めると、城内の兵はほぼ残っておらず、

 残りは王の親衛隊だけだった。

 しかし、先ほどのヒナタの説得でほとんどのものが、戦意を失っており、

 ある場所に集合しているとこのと。

 「ヒナタのおかげか・・・。

 そのヒナタの傷がどのくらいなのか。」

 かなりの出血で普通の人間なら立っていられないだろう。

 とらえられてから処置はされているかどうかもわからない。

 


 ヒナタ・・・。



 オレは、北の棟を見上げた。
 
 あそこに、ヒナタがいる。

 今すぐにでも助け出したい・・・・。

 「ルル。オレは親衛隊のところに行く。君とアランは国王のほうへ行ってくれ。

 君達で決着つけた方がいいだろう?」

 親衛隊のほうをフォレット国 国王が自らはなしに行ったほうが信頼してくれるだろう。

 スターター国 国王の方は息子であるアラン王子と、クーデター側の代表者が行って想いをぶつけたい所も

 あるだろう。

 「でも、陛下。ヒナタは?彼女のところへは?」

 誰よりも早くヒナタのもとへ行って助け出したい。

 でも。

 「ヒナタなら大丈夫。きっと大丈夫。

 それに何もせずにヒナタだけ助け出しに行ったらたぶん怒ると思う。

 他の人を助けるのが先だってね。」

 自分の体のことよりも、戦争を止めに行ったヒナタのことだ。
 
 誰よりも人が死ぬということを嫌っている。

 そんな彼女にオレは恥じないようにやるべきことをやらなければいけない。

 「予言の少女の力を信じてる。

 オレはオレでやらなければやらないことをきちんとやる。」

 気持ちをぐっと握り締めた手に込める。

 「さ、クーデター開始だ。君達の国を取り戻すぞ。」

 すくっと立ち上がりアラン王子たちがいる入り口まで急いだ。

 城の真正面から進入しようといったのはアラン王子だった。

 実はここが一番守りが薄いと言う。

 そっと壁に隠れて見張りの人間に見つからないようにアラン王子、ピンは潜んでいた。

 合流した一同は、ざっと先ほどの計画を話した。

 アラン王子はロンの考えに賛成し、親衛隊の控えの間をロンに説明した。

 みんなで計画をしていた際に、ロンはアラン王子から大体の城の構造は叩き込まれていたため、

 すぐにその場所の想像がついた。

 「じゃあ、オレが先に行く。ルル、準備はいい?」

 小さくうなずくルルを見て、うれしそうに微笑む。
 
 それを不思議そうに眺めていたロンにアラン王子はこそっと耳元でつぶやいた。

 「ルルと一緒に行動できる時が来るとは思わなかったからさ。

 これもヒナのおかげだね。」
 
 




 アラン王子とルルが姿をけした後、ロンとピン、そして隠れていたカイが行動を起こした。

 


 それと同時にヒナタはリリに微笑みかけていた。

 「私を助けてくれてありがとう。おかげで悪い人たちから逃げることが出来たわ。」

 「悪い人たちって?」

 「フォレット国の人。国王が私を殺そうとしたの。」

 ぎゅっと両腕で自分を抱きしめるかのように縮こまる。

 まだ、肩傷に痛々しく包帯が巻いてある。

 「大丈夫よ、ここなら安全よ。」

 そういってリリはヒナタを抱きしめた。

 凍りつくような微笑を浮かべながら。




 








 

 




  









    






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