第四章 8
セーラー服の襟とポニーテールに結んだ髪が風になびいている。
肩には竹刀入れを掛けている。
中には木刀のみ。
山の頂上の大きな石の上に立って、袂を歩いている人たちを眺める。
先頭には、ロンとコーナンがカルニンに乗って進んでいた。
なにやら二人で話しながら進んでいる。
二人は鎧をつけ、今までみたことない重装備だった。
戦争に行く服装なんだろうか、動きにくそうだ。
兜と刀を通さない鎧。腰には細いけど長い愛用の刀。
みな同じようだが、ロンとコーナンはわかる。
たとえ遠くにいたって、体格や動きで彼らの事は覚えている。
「ごめんね・・・。」
きっとここからは聞えないだろう。
だけど、謝らずにはいられなかった。
カイがそっと私の頬に擦り寄ってきて、慰める。
「大丈夫よ、ありがとう。」
そっと撫でてお礼を言う。
ロンたちにばれないように先回りしてスターター国に入り込んで戦争を止めなければ。
みんなに血を流してほしくない。
偽善者といわれても仕方がない。
だって、いやなものはいやだ。
それにこんな時にでるのが予言の少女じゃないのかな?
このまま守られてるようじゃ、自分がなぜここにいるのか、
こんな異世界に来たのか意味がないような気がする。
でも・・・・・。
「あー、ロン怒ってるだろうなぁ。かなーり。」
想像しただけで、あの冷たい怒りで鳥膚が立つけどこればっかりはしょうがない。
「だって、やっぱり納得いかない。
それに守られてばかりじゃねぇ。私じゃないでしょ。
攻撃が最大の防御よ。」
なんて独り言をブツブツ言ってもカイは冷ややかに私を見てため息をついた。
みんなで話し合った結果、私は城で待つことになっていた。
どんなに言ってもみんなの意見は絶対スターター国にいってはならないという。
スターター国にいる国王と魔女の狙いは私。
命を狙っているのに、わざわざ行くのは狂気の沙汰だって。
そんなこといったってね。
おとなしく言うこと聞く私じゃないってみんな知ってるでしょ?
私はカイと一緒に部屋に閉じ込められた。
カイの毒素はすっかりなくなってしまったので私の見張り番として一緒にいれられたのだ。
「カーイー」
『だめ、こればっかりはダメ。』
ちょっとでも逃げようかとするとカイに首根っこをあまがみでつかまれてベッドに戻される。
どうしたものか。
「ねえ、カイ。わかって頂戴。
私だって行かなくて済むものなら行かないよ。だけど、あの魔女は
多分私じゃなければいけないような気がするんだ。
それにカイだって私の力ぐらい知ってるでしょ?
そんなに私って弱い?」
『弱くないけど。だけど、だめ。心配。あの魔女、危険。』
カイはあの魔女と実際会ったことあるしね。よくわかってるんだと思う。
私はカイの目の前に立った。
「心配なら、カイも一緒についてきて。
カイが一緒なら私、安心する。」
その言葉でカイは動いてくれた。
私を乗せて窓から飛び出して、スターター国国境近くまで乗せてくれた。
国境近くの山は以前も超えたことがあるから、少しはわかる。
先に発ったロンたちを山の頂上から見送りながらほっと息をついた。
私がいなくなったこと、まだばれてないみたい・・・・・ね。
カイに乗ってきた私はカルニンよりも数段早い。
私がいなくなった知らせが届くのはきっと後になるだろう。
「さ、カイ。私たちも行こう。」
スターター国はそんなに遠くない。
カイの足だとあと数時間でつくだろう。
それまでに私の記憶ももてばいいけど。
途中で、自分が何をしたかったのか、忘れてしまったら意味もない。
今現在も何かを一つ一つ忘れている不安が常にまとわりついて気持ち悪い。
「早く解決して、早く記憶を返してもらわないとね。」
カイの後ろに飛び乗り、森の中へ入っていった。
スターター国まで早く行かないと。
この先どんなことが待っていても私は今、出来ることをやらなければいけない。