第三章 11





  



 



 国境近くになるとどんどん雨がひどくなってきた。
 
 ニコとゼフさんはスターター国に行く時に乗ってきた

 カルニンというこっちでは馬みたいに移動の時に乗る動物さんに乗っていた。

 私はというと、自転車。

 山道があったら悲惨だったけど、山道はないし、
 
 道自体も舗装されていたので、まったくの問題なし。

 アラン王子には立ち乗りしてもらった。

 本当はこれをやると警察に捕まるらしいけど、ほら、こっちには警察いないし。

 「これ、けっこう楽しいね。」

 うまいこと足を乗せて立ち乗りを楽しんでいるアラン王子。

 雨が降ってるけど、マントを頭からかぶって雨をしのいでいた。

 「そう?足辛くない?」

 「大丈夫。」

 鼻歌を歌いそうな返事をする。まったく気楽な人だなぁ。

 この人、本当に第一王子なのかな。実は影武者とか。

 「ひどいなぁ。影武者ってありえないから。こんな男前、そうそうにてるヤツなんかいないでしょ。」

 自分で言ってるし。

 「それにね、僕は影武者を立てるなんてそんな卑怯な事はしないよ。」

 ああ、そうだろうな。この人なら。

 卑怯な行動をしていた自分の父親に悪態ついていたし。

 きっとまっすぐな人なんだろう。

 この人が、ロンにどんな話があるのかわからないけど、

 きっと変な話じゃないはず。

 そうなぜか信じることが出来た。

 




 

 雨がだんだんと激しくなってきている。

 自分専用のカルニンに跨りながらその雨を肌で感じていた。

 マントをしていてもかなり肌寒い。

 ヒナタたちは大丈夫だろうか。

 ひたすら、ヒナタたちの心配ばかりしていた。

 国境近くになり、見張りの兵士達が見えてきた。

 ここ国境近くは、特に壁などがあるわけではないが、

 最近スターター国の動きが怪しいためフォレット国側に

 小さな建物を作り、交代制で数名見張りをするようにしている。

 「ロナルド陛下、どうされましたか!」

 突然の国王の出現に慌てている。

 そうだろう、国王自ら出向くという事はありえない行為だからだ。

 しかも誰もお供をつけずにたった一人で行動を起こすなんて信じられないだろう。

 まあ、この国一番の剣の名手コーナンと互角で戦えるというのは、

 多分誰も知らないだろうけど。

 なので自分としてはあまり護衛の意味がないと思っている。

 ただ、立場上一人で行動するのはあまりよくないため数名付けているのだが。

 見張りの兵士に対し話をしようとした矢先、

 かすかにカルニンの足音が聞える。

 しかもスターター国のほうから。

 見張りのものが慌てて剣を構える。

 雨が降っているため、視界が悪い。

 しかし、自分にはわかる。

 シャーっという、独特な音。

 そう、ヒナタと練習した自転車というものの音だ。

 「大丈夫。あれは見方だ。」

 見張りの兵士をそっと手で制すると三体の動くものが見えた。

 三体?

 先頭にはニコの姿。

 なぜか大きな野獣がついてきている。

 別に追われている様子ではなく、一緒に走っているみたいだ。

 そして、そのあとには・・・・・・。

 「ヒナタ!」

 思わず大きな声を出してしまった。

 普段のオレからすると誰も想像できないだろう。

 冷酷で、常に考えてから行動をする。

 決して大声を出さない。

 そんなオレが少しでもはやく彼女の姿を確認したくて、

 この腕の中にしまいたくて、

 はやる気持ちを抑えきれないなんて。
 
 「・・・・・。ロン!」

 向こうから、愛しい彼女の声がする。

 声を聞くと今まで抑えてたいた気持ちがあふれ出す。

 カルニンから飛び降り、

 雨が降って濡れていようが、

 泥が跳ねてマントが汚れようが、

 周りに人がいようが、

 まっすぐ彼女のもとへ駆け出した。

 彼女は自転車を止め、

 自分の元へ走ってくる。

 そして、体ごと体当たりして抱きついてきた。

 「ロン・・・・。ロン・・・・。、」

 ああ、彼女の体温。

 彼女の匂い。

 きつくきつく、抱きしめた。

 「おかえり、ヒナタ。」

 「ただいま、ロン。」

 彼女は今まで一番の笑顔でそう答えた。

 その笑顔がたまらなく、

 オレはキスをした。



 




 

 

 





  









    






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