第三章 4





  



 

 どんなことでもやってみせる!!なんて意気込んだのに、

 目の前のものをみて、呆然としていた。

 


 「これ・・・?」

 一応、聞いてみた。

 『そう、なんだけど・・・。無理か。』

 私を案内してくれた動物がため息交じりでいった。

 目の前のものとは、下水溝。しかも、超細っこい。直径5センチぐらいかな。

 うん、やる気があるんだけどね、物理的に無理かと。

 確かに水が流れてるものに関して結界が無理なことはわかる。

 ほかに道はないのかな。

 悩んでいると、時間切れで私は人間の姿の戻った。

 ううん、タイムリミットか。仕方ない。正面から乗り込むしかないよね。

 メイドの服を調え、ネコもどきさんたちに声をかけた。

 「ありがとうね。もう一つ、頼みがあるんだけどいいかな?」

 『いいですよ?なんですか?』

 「この道を通れる動物さんに彼のところにいって彼を起こして逃げれるように腕の縄を解いてほしいんですが。」

 とても危険なことを頼むのは申しわけない。

 できれば自分が行きたいぐらいだ。だけど、私が今出来ることは彼らに頼むことなのだ。

 『それならお安い御用よ。いつ行けばいい?』

 「夜が明けるちょっと前にお願い。私は正面から入り込むから。」

 この国のことを調べるうちに見はりの手薄な時間帯というものがわかってきた。

 もともと、三交代で見張りをしている。朝、夕方、夜中。

 朝方が交代前で疲れもピークに達しているので行動起こすならこの時間だ。

 自分は朝ごはんを届けに来たといえば通してもらえるだろう。

 ヒナタの言葉にうなずいてネコもどきさんたちは去っていった。

 彼のところに入り込んで助け出したならばあとはニコが何とかしてくれる。

 今日はこの辺でメイド仕事に戻ろう・・・・・・。

 そう思い立って城の中へ入ろうと掃除のフリをしていた箒をもって立ち上がりざま、

 人にぶつかった。


 「ごめんなさい。」


 「こっちこそ、ごめん。」
 

 そういって手を差し伸べてくれた人物は男とは思えないほど綺麗な顔をしていた。








 その頃、ニコは今までにない真剣さで大男の前に立っていた。

 「そんなふうににらんでも怖くありませんから。それよりも、彼女に合わせてください。」

 市民の中に入り込んで、情報を得ていた場所にたどり着いた。

 そこは、娼婦街であり、若い女性が一人で歩くにはとてつもなく不似合いなところであったが、

 ここにニコが求めている人物がいるのであった。

 若い女性が歩いているだけでも皆がびっくりしているのに、

 娼婦街のなかでも一番柄の悪いとされている場所へズンズンと入っていったところをニヤニヤした大きな男が止めた。

 「じょうちゃん、ここはあんたのような子が来るところじゃないよ。それともここで働きたいんかい?」

 「私は、ルルに会いに来たんです。彼女のところへ案内して下さい。」

 ルルという名前を出したとたん、大男が表情を変えた。

 「そんな女はいない!とっとと帰んな。」

 「私はあなたと話す時間はあまりないんです。彼女にニコが来たと伝えてください。」

 大男を睨み返しながらニコは静かに言った。

 「だから・・・・。」
 
 大男がニコをつかもうとしたとたん、

 「あ〜。その子に下手に触らないほうがいいよ。あんたよりもずっとおっかないよ。」

 後ろから、女が一人出てきた。

 その女は真っ赤な髪を腰までうならせ、下着か洋服かわからないものを身に着け、若い純情な男がみたら鼻血をだしそうなプロポーションで

 すらりとした足をしなりしなりと出す姿はまさに妖艶であった。

 「ルル!!」

 ニコがルルに抱きついた。

 「あんた、よくここがわかったね。」

 「そりゃ、こんなに完璧にかつわからないように結界をはれるなんてこの国じゃあルルしかいないとすぐわかったよ。」

 二人が話しに盛り上がっているのを大男は呆然と見ていた。

 「あの・・。あねさん。そちらのお嬢は・・。」

 おどおどと、男がきいた。

 「ああ、この人はねぇ、私の師匠。」

 その大男は驚きのあまり、声が出なかった。

 「まあ、師匠といっても年は私のほうが上なんだけどね、実力はすごいのさ。ささ、師匠あがってあがって。」

 そういいながらうれしそうにニコの手を引っ張って中に入っていった。

 奥にはそとからはとても想像つかないほどの会議室や研究室があった。

 さすが、ルル・・。頑張ってるんだね。

 ニコはかつての愛弟子の成長した姿にうるうるした。

 「師匠がこの国に来たってことはそろそろ動くの?」

 お茶を入れながらルルは真剣な目でニコに問いかけた。

 「多分もうすぐね。でも、今日は人を助けに来たのよ。」

 「ああこの前、捕まった人?でも、どうやって?地下牢に入って助かった人はいないよ?」

 「だから今回はルルに力を貸してもらおうと思って。」

 にっこり笑ったニコにルルはいやーな予感がした。

 

 

 





  









    






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