第二章 9





  あまいあまいキス。

  優しく私を包み込んでいく。

  キスってこんなに甘いものなんだ・・・・。

  はぁってため息が出てしまった。

  「そんな目で見ないで。止まんなくなるから。」

  そんな目って。どんな目よ。

  そう思いながらロンを軽く睨む。

  「はぁ、わかってないなぁ。まあいいや。

   とにかく、オレ以外にそんな顔みせないでよね。」

  そう言いながら、両頬をブニーっと広げられてしまった。

  「ひろい!!なひふんのひゃー」

  まったく、怒りモードは効かないらしい。大笑いしてる。

  ひどい、乙女の顔をこんなにしときながら笑うなんて。

  でも・・・・・。

  こんなに大笑いしてるロンてめずらしいな。

  私、ロンのこの顔が一番好きだな。

  私も元気になる。






  ねえ、ずっとこうしていたいね。

  いつまでも二人で笑っていたいね。

  なぜか、このときそう思ってしまった。

  どうしてだろう。私はいつか帰らなければいけないのに。

  そう、いつかここを離れるんだ。

  「ねえ、ロン、私っていつか帰られるのかな?」

  なぜか、自然と口から出てしまった。

  ロンはとてもさびしそうに笑いながら私に言った。

  「ヒナタは帰りたい?そんなにここがいや?」

  私は帰りたいのかな?ここがいやなのかな?

  黙りこんでしまった私をふわりと包み込んで、

  「ごめんね。帰りたいよね。変な質問してごめん。」

  そう言って強く抱きしめた。

  私はなんて答えたらいいのか、分からなかった。

 








  それから、ロンは急によそよそしくなった。

  あまり、目を見て話さなくなった。

  お茶の時間になっても呼びに来ないし、

  行ってみても仕事が忙しいからといってことわられた。

  ハリーいわく、

  「兄さまは他国とのことで急に忙しくなったんだ。」

  ベルいわく、

  「兄さまもかわいそうな立場なのよ。」

  ロールいわく、

  「彼も人間ですので。」
  
  ニコいわく、

  「陛下の立場も辛いのよね〜。」

  コーナンいわく、

  「・・・・・・・。(真っ赤になって逃走)」

  と、ばらばらな意見が。

 みんな、統一性もとうよ。

 とにかく、ロンが忙しくなってきたのは間違いないらしい。

 嫌われた・・・・。とかじゃ、ないよね・・・・。

 帰れるかどうか、聞いたことでロンを傷つけたわけじゃないよね。

 ロンと話ができなくなるとどんどん悪い方向へ考えがいってしまう。

 やだなぁ。こんな私。

 こんな自分、初めてだ。

 いつも不安になるとロンが来てくれたのに。

 今回ばかりはさすがに来てくれないや。

 そう思うと泣きそうになってきた。

 ついこの前まではあんなに楽しかったのに。

 こんなに気分が浮き沈みするなんて情緒不安定になったのかな。

 こんなに落ち込んでる私にさらに追い討ちをかけるように

 大きなニュースが飛び込んできた。

 それはロンが他国の姫様と婚約するという話だった。
  









    






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