第二章 7
何だか変。うん。変だ。
みんな、何だかにやけてる。
ここ数日、こんな調子。
これはいったい・・・・。
この前、ドレス着たのがそんなにおかしかったのかなぁ。
「ヒナタ、どうしたの?難しい顔して。」
ニコがシーツを片付けながら私を見た。
「なんかね、みんな変なの。にやけてるって言うか、へんな目で見てるって言うか・・・。
この前、ドレス着てからなんだよね、そんなに変だったのかな。」
ププッとニコが吹き出した。なんで笑うのさ。
「いやぁ、ヒナタってほんと鈍いねぇ。いやぁ、カワイイカワイイ。」
なんだか、馬鹿にされてるような気がするのですが。
「まあいいや、ロンのところにいこう。」
今日は自転車にのる約束をしていた。ずっと前から約束してたのだ。
「陛下のところに行くのにななななんという格好・・・・・。」
ニコ。かんでますから。そんなに慌てることもないでしょうが。
「だって、今日は自転車に乗る練習するんだよ。汚れてもいい服じゃないと。大変なんだから。」
手をヒラヒラ振りながら私は部屋を出た。別にいいじゃん、ジャージでも。運動するんだから。
「ローン!!」
広い芝生が広がっているところにロンが立っていた。
ここは乗馬の練習をするところらしい。
「ヒナタ。遅いぞ。」
彼は数日前からもう乗りたくてしょうがなくって仕事を死ぬほど処理してきたのだ。
「ごめん、ごめん。じゃあ早速乗り方教えるね。ここに座って、両手はココ。足は・・・。」
ロンは目をキラキラしながら説明を聞いている。こうやって見ると幼いなぁ。
「じゃあ、後ろから押すからペダルこいでね。いくよー。」
そういって後ろから押した。
「お、動いた。すごいぞ。」
すごい、楽しそう。手、離しちゃえ。あ、ちゃんと乗ってるよ。チッ。
つうか、一回で乗れるというのも嫌味なやつだなぁ。
あ、こけた。(笑)
「ヒナタ!ひどいじゃないか。手を離すと危ないじゃないか。」
怒ってる怒ってる。
「自転車はね、みんなこうやって体で覚えるもんなのよ。」
「そうか、分かった。もう一度いいか?」
立ち直り早いなぁ。そう思いつつ、後ろを押してやる。
そして手を離す。今度はフラフラせずにのってるよ。
バランス感覚がすごいねぇ。
「コツがわかったぞ。で、止まり方は・・・・。」
あ、教えてなかった。
「両手のところに取っ手があるでしょ?それを引けば・・・・。」
ロンが急にブレーキを引いた。
「急に引くとあぶないよ〜ってもう遅いか。」
転んだロンの元へ走っていく。すでに彼は立ち上がって埃をはたいてる。
「ヒナタ、オレにちゃんと教える気あるか?」
「やだなぁ。自転車はね、理屈じゃないの。体でおぼえるもんなのよ。」
自転車を起こしながら言った。
「でも、ロンってすごいよ。普通、一回で乗れないから。さすが王子様だね。」
「王子でなく、国王なんだけど・・・。ま、いっか。
なんとなくコツはとれた。次は乗れると思う。」
そう言ってひょろひょろしながら自転車に見事乗って見せた。
さすがだね。普段も運動しなれてるのかな。肉付きも無駄な肉ついてないし、
綺麗な筋肉してるのよねぇ・・・・・。はっ、いかんいかん。あやしい目つきになってたよ。
「よだれたらしてるぞ。」
こ、こいつ。いつの間にここにいるのよ。
「そんなにオレの裸見たいのか、いつでも協力するぞ。お前限定で。」
何を言い出すんだか。
「いりません。つうか、なんで限定なのよ。」
「オレはお前に優しくするって言っただろう?」
そういって私の髪に口付けをした。
「な、な、な、な。」
「なにをするの。か?」
分かってるならやらないでよ!!!
激しく抵抗する私にニヤリと笑って耳元でささやく。
「お前のその困った顔がかわいいからついいじめたくなるよ。」
!!!!!!!!!!!
「ロンのバカー!!」
私の叫びは王宮まで響いていたらしい。次の日にはまたみんなの視線が一段とにやけていた。