第二章 6
「な、なにすんのよー!!」
ドカッ。
思いっきりグーで殴りました。あああああ。
だって、だって初めてだったんだよ!!
なんの断りもなく、いきなりするなんて。
「いってー。ふつう、グーで殴るか?グーで。」
だって、だって、だって〜〜〜〜〜〜〜〜!!
「初めてだったんだ。」ニヤリ。
今、ニヤリって聞こえたよ。ニヤリって。
「わ、悪い?」
「いいや、うれしいよ。」
なんだか、キャラ変ってませんか?いつもと違うよ。なんだか目がキラキラしてるよ。
「いつもって?」
ええと、意地悪で、意地悪で・・・・・。
「ふう〜ん。そんなふうに思ってたんだ。じゃあ、これから優しくするよ。」
やーめーてー。そんなキャラじゃないでしょうが!!
「でも、意地悪は嫌いだろう?じゃあ、優しくする。」
「確かに意地悪は嫌いだけど・・・。なんか、変。なんか、不自然。」
「じゃあ、意地悪のオレが好き?」
なんだか、追い詰められてるような・・・。気のせいでしょうか?
「それとも優しいオレのほうがいい?」
そんなやさしい目で見られると誤解するんですが。あ、後ろがない・・・・。
「誤解ねぇ。ヒナタは好きでもない人とキスできるの?」
「キスは好きな人としかしないわよ!あたりまえじゃない!!」
「じゃあ、オレとキスしたヒナタはオレのこと好きなんだ。」
あ、なんだか顔が近づいてるような・・・。気のせいか?
「そ、それはロンが無理やり・・・・。」
「じゃあ、今度は?」
そういうと私のあごをもって顔がどんどん近づいてくる。
だめだ。ヤツの目にすいこまれそうで・・・・・。
「ひーなーたー!!ドレス着てるんだって?どこにいるの?」
ガクッ。という音がロンから聞こえたような。
あぶなかったぁ。危険危険。助かったよ、ベル。
「と、とにかくからかわないでよね。もう行くから!」
そういってロンの束縛の中から逃げ出した。
走ってベルのもとへ行くとびっくりされたけど。
でも、でもでもー!!
いったいどうしたの?急にあんな態度とるなんて。
きっと新手の嫌がらせに違いない。きっとそうだ。違いない。
「どうしたの?真っ赤な顔して。」
「ううん。別に何もないよ。」
とってつけたような言い方してベルは変な顔をした。
「兄様と何かあった?」
「なにかってなにかってなにか?」
どうしてそんなに感が鋭いのだろう。
「ヒナタが鈍感すぎるとも思うけど・・・・。」
ううう、9歳児に言われたよ。
「別に何もないよ。」
あ、横目で私をみてる。お姫様がする行動じゃないぞ。
「ま、兄様がヒナタに何をやってもおどろかないけどねぇ。」
「な、なんで?」
「ふふ〜。秘密。」
なにやらベルは楽しそう。私は楽しくないぞ。むぅ。
「ほら、ふくれない、ふくれない。せっかくドレス着てかわいく変身したのにもったいないよ。」
なんか、ごまかされてるような・・・。
「気のせいだよ、ねえヒナタの部屋でお茶しよう。私、お菓子持ってきたんだ。」
「お菓子?行こう行こう、私お茶入れるね。」
お菓子という単語が出たらロンのことがどこかに飛んでいったらしい。
日向の変りようにベルは
「兄様、道のりは遠そうよ・・・。」
とボソッとつぶやいたが幸い日向の耳には入ってこなかった。