第二章 5




 暗い暗い地下室に続く階段に歩くたびにまるで自ずから道を記すかのように

 ろうそくの明かりが一つ一つついていく。

 行き着いた先には重い扉がしまっていた。

 何者かが手を扉にかざし、呪文を唱えると扉が開いた。

 扉の奥には祭壇があり、祭壇の前には呪文の書かれていた円陣があった。

 そっと、円陣の中に入りまた呪文を唱えると青い光に包まれそのものの姿がなくなった・・・・・。






   「おはようございます、ヒナタ。」

 「おはよぅ。」

 まだ、夜明け前だ。ヒナタはニコが起きる前に起きて朝稽古をし、

 へとへとになりながらも自分の部屋に戻ってくるのだった。

 「今日も剣術の稽古、お疲れ様でした。」

 ニコは笑顔で部屋の主を迎えるのだった。

 「疲れたー。もう、コーナンたら鬼コーチもいいとこだよぉ。

 うちの部長だってここまで鬼じゃなかったのに。」

 「部長?」

 「ああ、なんていったらいいのかな、剣術を習う人たちのリーダーってとこかな。」

 ヒナタはジャージからいつもの制服に着替えながらニコに話した。

 「あ、ヒナタ。今日はそっちじゃなくてこっちを着て。」

 そういって出されたのはドレスだった。

 「もうそれは着ないっていったもん。」

   「そうは言っても洗濯しないとだめでしょ?たまにはドレスを着ないと

   ドレスが泣いちゃうよ。私も泣いちゃうよ。」

 ニコはそうやって泣くフリをした。

   「もう、だまされないもん。」

 実はこっちにきて数日間、ニコの泣くまねによって日向は散々ドレスを着せられた。

 黙っていると装飾品がジャラジャラつけられるほど。

 さすがに最近はニコの泣きまねに慣れたのかドレスを着らずに済んでるのだが。

 「でも、今日はほんとに洗濯したいの。ね。お願い。」

 洗濯までしてもらってる分申し訳ない気持が大きくなり素直に制服を渡す。

 「じゃあ、洗濯おねがいします。」

 「じゃあ、これ着てね。」

 そういって出されたドレスはいつもよりフリフリも少なく、

 丈も短くつまずかなくて済みそう。

 着てみると、意外と動きやすくかわいらしい。

 「これなら、大丈夫でしょ?ちょっと髪をあげてみて・・・。」

 とあっという間にニコが髪を両サイドを結った。

 「うわ〜。予想以上かも。」

 え、なに?へんなの?気に入ったのになぁ。

 「違うの、予想以上に似合ってるよ。やっぱり私センスいいなぁ。」

 自分でいってるよ、この人。





 朝食を済ませ、勉強の時間も終わった。

   もうそろそろロンとお茶の時間かなと思ってた矢先、意外な訪問者が。

 「ヒナタ、明日の稽古のことだが・・・。うわっ。」

 「ちょっと、うわってなによ。うわって。」

 「いや、いつもと違うから・・・。」

 そういって、コーナンは真っ赤になった。

 「たまにはね。あ、明日の稽古のことって?」

 話題がそれたのでコーナンはホッとした。

 いつもジャージでいるヒナタばかり見ていたので女の子らしい格好されると

 ドキドキしてしまってどうしたらいいのかわからなくなってしまうのだ。

 「今日から泊り込みでの仕事があるから、明日の朝は稽古つけてあげれないんだ。」

 「そか、じゃあ明日稽古はお休みね。」

 明日、勉強のほうもお休みだし、何しようかなぁ。

 考え事をしてるうちにまたもや訪問者が。

 「今日はきてやったぞ。うゎ。」

 ハリーがびっくりして抱えていた本を落としそうになった。

 みんなして、なによ。その反応。そんなに変なのかなぁ。

 「ヒナタがそのようなかっこうしてるんじゃ、小川のほうには行けないな、じゃあ」

 と、耳まで真っ赤になってくるりと向こうを向いて走っていった。

 なにも、返事してないのに・・・。もう行っちゃった。

 しょうがない、ロンのところに行こう。

 ロンの部屋まで行き着くと部屋の前の警備をしているものが驚いている。

 「こんにちは。なんでそんなに驚いているの?」

 やっぱり変なのかなぁ。とちょっと凹みつつ聞いてみる。

 「い、いえ。ロン様ならお部屋の中にいらっしゃいます。」

 あわてながら部屋に通された。

 ロンとお茶をするようになってから日向は当たり前のようにこの部屋を出入りできるようになった。

 もちろん、彼女の人柄で周りの人間に認められてきたのだ。

 「ああ、ヒナタか・・・。そ、それは?」

 「たまにはね。って、みんな変な顔をするんだけどそんなに似合わないのかなぁ。」

 スカートのすそを持ち上げながら首をかしげた。

 そのしぐさがロンを釘づけにしてしまった。

 「よく似合ってるぞ。」

 冷静になりながらロンは言った。

 「ほんと?だれも目を合わせてくれないの。無理していってない?」

 「オレは嘘はつかん。」

 間近で覗かれますます赤くなっていくロンを見て一緒に仕事をしていたロールは噴出してしまった。

 「これじゃあ、仕事になりませんね。しばらくお休みしましょう。」

 そういってそそくさと部屋を出て行った。

 ロールのヤツ・・・・。とぶつぶつ言っているのは日向にはまったく聞こえなかった。

 「きょ、今日は暑いから散歩でも行くか。」

 そういってスタスタと部屋を出て行くロンをあわてて日向は追いかけるのだった。




 しばらく歩き、外に出て噴水のところでやっとロンが止まった。

 「もう、ロンったら、速いよ。」

 「ああ、ごめん。ちょっと休もうか。」

 ここは日向は初めて見るところだった。噴水の周りには綺麗な花壇があり、

 色とりどりの花が咲き乱れている。ここを一目見て日向は気に入った。

 「綺麗なところだね。こんなところあったんだ。あ、これかわいい。」

 そういうと花のところまで行ってにおいをかいでいる。





 まったく、不思議な少女だ。行動の予想がつかないというか、目が離せないというか・・・。

 ヒナタを見ているとドキドキしたりびっくりしたり安心したり、自分がこんなにも感情が豊かだったかびっくりするぐらいだ。

 ふっと、ヒナタと目が合うともう離せなくなる。そして彼女を抱きしめたくなる。

 彼女を自分だけのものにしたくてたまらなくなる。

 彼女と会ってまだ間もないというのに・・・・・・。





 ロンはただじっと日向を見つめていた。

 そして笑顔でロンを呼ぶ日向に吸い寄せられるように彼女のもとへいった。

 「ロン、どうしたの?」

 いつの間にか抱きしめられていた。

 ロンは日向の質問には答えずキスをした。

  









    






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