2、仕返し
 







 う〜ん。

 う〜〜〜〜〜ん。

 頭を抱えて考え込んでいる私にクルトが声をかける。

 「どうした?なにかあったのか?」

 「なんかさ、仕返ししたくない?あの人に。」

 「あの人?」

 


 私たちは恋人同士になったけど、

 どうも邪魔が入る。

 変な外国人ミカエル様のこととか、

 急にクルトが長期の仕事に行ったり。

 その裏側にはある人物が浮かび上がる。

 その人物とは・・・・・。





 「今日も一段と綺麗だね。僕は毎日君が美しく変身していく度に、

 周りの男どもが君を見つめるかと思うと、

 嫉妬で心がどうにかなりそうだよ。」

 廊下の隅っこで秘書のロザリーを口説いている。

 私とクルトはそれを廊下の曲がり角のからうかがっていた。

 はぁ。この人はまだこんなことやってるのか。

 脈がないってどうしてわからないんだろう。

 「そうですか。ありがとうございます。

 ですが、心臓になにか異常があれば医師に見てもらったほうがいいですよ?」

 笑顔でロザリーが言うとため息をついている。

 「おお、ロザリー、恋の病気は医師じゃ治らないんだよ。」

 さ、寒いですわよ、兄様。

 まったく脈がないというか恋愛に関して驚くほど鈍感なロザリー相手に

 もう数年粘ってるようですがこの始末。
 
 ロザリーも嫌いじゃないと思うんだけどね。

 どうしてここまで鈍感なのだろうかと頭を抱えるほど鈍感なのね。
 
 二人の様子を遠くから眺めていた私たちは、二人でため息をつく。

 「まあ、ね。あそこまで相手にされないと誰かにいじわるしたくなるわね。」
 
 「確かにな。目の前でイチャイチャされたら誰でも嫌がらせしたくなるだろう。」

 だんだんと、兄様が可哀想になってきた。

 「私も片思い歴が長かった分気持ちはよくわかる。

 それに誰かさんはずっと私をふり続けてたしね。」

 「そ、それは・・・・。」

 今でも昔の話をされると弱いらしい。とても申し訳なさそうな顔になる。

 自分だって辛かったって言ってたのに、

 私が苦しかったことのほうが自分のことより辛いと思うあたり、

 クルトらしくて大好きだ。

 「んー、でも今は幸せだから許す。」

 そういって大きな腕に抱きついてホッペにキスをする。

 「い、今は仕事中!」

 堅物のクルトは仕事中にこんなことをするととても慌てふためいて腕を解かれた。

 仕事以外の時は自分のほうが大胆な行動するくせに。

 全く、たまにはいいじゃない。

 「クルトのけちんぼ。」

 ぶぅっと膨れてプイッとそっぽを向いて執務室に向って歩いた。

 後ろの方ではぁっとため息が聞えた。

 ううう、子供過ぎてあきられちゃった?

 でも、チュゥしたかったんだもん。

 「まったく・・・・。」

 ブツブツ文句が聞えたかと思ったら、廊下の柱の影に連れて行かれて壁際に立たせられた。

 クルトは私の顔の横に両手をついて少し怒った表情をしている。

 やっぱり怒った?

 「仕事中にそんなことしたら感情を抑えられなくなるでしょう?
 
 あなたを守りきれなくなったらどうするんですか。」

 そういってキスをしてきた。

 徐々に深くなってきて思わず声が漏れた。

 「ほら、止まらなくなってきた。どうしてくれるんですか?」

 うう〜、そんなこと言ったって。

 ほてった頬を優しくさする、クルト。
 
 その目は、ドキドキするくらい優しくて。

 だんだんとまた唇に吸い寄せられそうになった時、





 「おーまーえーたーちー。仕事せんかー」




 兄様が後ろで、仁王立ちしていた。

 「まったく、オレがこんなにせつない恋をしているというのにここでこんなことしやがって。

 嫌がらせか?」

 いや、まさか見られてるとは。はは。

 二人で苦笑いしながら並んで立った。

 「くそぅ〜、今度仕返ししてやる〜。」

 そういいながら泣きながら走り去っていった。

 いや、これ以上嫌がらせしないでください。

 走り去った兄様を二人で呆然と見送りながらこれ以上の嫌がらせってなんだろうと

 二人して悶々と考えるのであった。

 

 



 

 


  





  









    






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