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「ちょっと、アナタ、なに直様を独り占めしてるのよ。」

 朝、いつものように彼とご飯を食べて終え、診療室に戻ろうとしていたところを

 一人の女性に捕まった。名前を高田もえという。

 彼女は葵の前に仁王立ちしている。

 綺麗だけど般若みたいな顔をしてるなぁ。

 「聞いてるの?直様はみんなのものよ。ぬけがけなんか許されないんだから。」

 ああ、肌もあれてる。ちゃんと規則的な食事とってないんだな。

 「彼は勝手に私の食事してるところにきて一人でしゃべってるだけです。

 私が拘束してるわけではありません。」

 診療室のドアを開けながら彼女を招きいれ、椅子に座らせる。

 「何をいってるの?そんなわけないでしょ?何を武器に彼を拘束してるの?

 わかった、その白衣で彼に迫ってるんでしょ!!」

 何をいってんだか・・・。

 とりあえず、ストレスにいいアロマを焚いてリラックス効果のある紅茶を・・・。

 「武器などもってません。朝一度庭園でお水を彼にあげたらなぜか毎日来るようになったんです。

 理由は彼に聞いてください。はいどうぞ。」

 「あ、ありがとう・・・。って、何ライバルにお茶なんか出してるのよ!!」

 ライバルねぇ。私には恋愛感情は一切ございませんが。

 それにどうせ、あちこちに私と同じようなセリフを吐いて思わせぶりな態度をとってるんだろうな、ヤツは。

 「とにかく彼とはなんでもありませんから。これはリラックス効果のある紅茶を

 私がブレンドしたものです。朝からそんなにカリカリしてたらからだがもちませんよ。

 肌の調子も悪そうだし、ちゃんと朝ごはん食べてきましたか?」

 「あ、やっぱりあれてる?最近、ご飯どころじゃないのよね。はぁ〜。」

 「食は体の基本です。ちゃんとしたご飯を食べないと仕事の能率にも影響しますよ。

 もちろん、肌も悪くなるし精神的にもよくないです。せっかく綺麗なんですから

 もっと自分を大事にしてくださいね。」

 「うん、わかった。紅茶ありがとうね。すっきりしたわ。おいしかったし。」

 「そうですか?よかったです。」

 そういってにこりと微笑んだ葵をしばし見つめた。

 「何かついてますか?あ、もうそろそろ時間じゃないですか?」

 「あ、やばい。朝一で会議だった。紅茶ごちそうさま。」

 「はい、いってらっしゃい。」

 もえはそうやって職場に送られたのは初めてだった。

 なんだか、あったかいな。

 今日は仕事バリバリ出来そう!

 廊下でやる気ポースをして職場まで走った。

 その先には秘書課があった。

 秘書課は女性ばかり6人おり、とてもきらびやかな世界だった。

 「みなさん、おはようございます。」

 「おはようございます、先輩。

  あ、なんか良いことあったんですか?いつもとなんか違いますね。」

 「ふふ、わかる?」

 「もしかして新しいエステ見つけたんですか?なんか、すっきりしてますよ。」

 「すっきりねぇ。確かにすっきりしたけどエステなんか行ってないわ。

  さあ、今日は朝一で重役会議があるのよ。みんな準備もう大丈夫よね。」

  「もちろん、大丈夫ですよ、さっき資料も最後のチェックしましたし。

  いつ始まっても大丈夫です。」

  「さすがね。じゃあそろそろ皆さんを案内しましょう。」

  もえの声でそれぞれ自分のお付の重役の下へといった。

  もえもとある部屋の前で立ち止まりノックする。

 「どうぞ。」

  お辞儀をして中にいる人物に声をかける。

 「一条専務、会議の時間です。」

 「わかった。じゃあ、この資料よろしく。」

 そういってもえにロムを渡したのは直だった。

  









    






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