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「おはよう、今日も良い天気だね。つきあおうか。」
「おはようございます。申し訳ないですが却下です。」
これが彼らのいつもの挨拶だった。
葵が朝屋上庭園に行くと必ず直が来ている。
ため息つきながらもここで朝食をとるように体に染み付いているので
今更日課をかえようとは思えず結局は彼と話をすることになった。
「どうしてここでここで朝ごはんを食べるの?家では食べないの?」
「一人暮らしなのでここで食べたほうが気持ち的にもいいんです。」
「じゃあ、僕もここでたべようかなぁ。」
いつもこんな感じで一方的に直がいろいろ聞いてくる。
葵は必要なこと意外は話そうとしない。
それを全く気にしないように直はのほほんとしている。
そう、直は見かけはバリバリ働いてかっこいい感じがするのだが。
葵はそんな直に最初は驚いたが別に表情には出さず普通に接している。
8時になるとお互いに自分の部署に戻る。
葵にとってこれが新しい日課となってしまった。
だが別に必要以上に迫るわけでもなく、
挨拶のように付き合ってくれというだけで
葵はこれが彼なりのスキンシップなのかなぐらいにしか思ってなかった。
彼女はプライベートであまり人と深く付き合おうとはしない。
親友といえる友達が一人ぐらい。
後は家族のみ。
彼女の周りには「話しかけるなバリア」があるらしく
病院で働いていたときも職場の人間とは必要なこと意外は話さなかった。
しかし、時折見せる笑顔が暖かいことや患者に対してはとても親身になって対応することから
隠れファン(看護師・医師・患者・技師などなど)はかなりの数だった。
本人は全くもって気づいてなかったが。
今は職場といっても医師と2人きりでたまに訪れる職員としかかかわりがないため、
彼女の存在は埋もれていた。
そう、嵐が訪れる日までほとんどの職員が彼女の存在すら知らなかったのだ。