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武と別れた後、みんなで喉が渇いたということで

 近くの居酒屋で飲むことになった。

 「ま〜たく、この私を連れて行くんだからもうちょっと

  おしゃれなとこにしなさいよね。」

 と言いながらもリョウはニコニコしながらビールを飲む。

 「じゃあ、別についてこなくてもいいじゃん。」

 「なによ、あんたが後からついてきたんでしょうが。」

 ああ、この二人は今日が初対面のはずなんだけど。

 すっかり息があってるのね。

 ニコニコしながら二人を眺めていたら、

 「「なにわらってるのよ!」」

 おお、ハモってます。仲がいいなぁ。

 よかった、仲良くなってくれて。

 「あのねぇ、なんでこんなオカマと仲が良いのよ。ありえないから。」
 
 もえはビールを一気飲みした後、店員さんにビールを注文してた。

 「失礼ね、私と葵との仲はあなたの入る隙間は無いから。」

 そう言ってリョウは私を横抱きした。

 持っていたビールがこぼれたよ・・・・。

 「あ〜、そんなことしてると直様に怒られるから。」

 ニヤニヤしながらもえが言った。



 一条さん。

 今はただ会いたい。

 すごく会いたい。

 会いたい。

 会いたい。

 会いたい。

 会いたい。







 お酒が入っているせいか、涙もろいような気がする。

 彼を思い出すだけで涙が出ちゃう。

 「やだ、泣かないで。明日には帰ってくるんだから。」

 「そうよ、ほら、もえが変なこというから葵が泣いちゃったじゃないの。」

 前はこんなことぐらいで泣かなかったのに。

 どうしてこんなに弱くなったんだろう。

 リョウの腕の中でしくしく泣いていたらバリッとはがされた。

 そして、後ろから暖かい腕が。

 「泣くなら俺の腕の中だけで泣くように。」

 優しく耳元でささやかれた。

 「「直様!」」

 やっぱり仲が良いのね。この二人。

 じゃ、ない。

 腕を無理やり振りほどいた。

 「明日帰ってくるんじゃなかったんですか?

  なんでここにいるんですか?」

 ニコニコ。

 「あ、の、だから。」

 ニコニコ。

 「一条さん?」

 ニコニコ。
 
 ただニコニコしてる一条さんを見て途方にくれたようにリョウともえを見る。

 二人とも真っ赤になってたけど。

 ど、どうすればいいか・・・。

 「君の顔を見たら安心したよ。倒れたって聞いたから。」

 「な、なんで知ってるんですか?」

 あ、わかった。

 二人を見たらもえがそろ〜っと手を挙げた。

 「一応秘書ですので。報告をと。」

 なにが報告ですか。

 「でも海外にいってたんですよね。」

 「ああ、じつは一日早く仕事終わらせたんだ。」

 ニコニコしながら手を握った。

 向かい合わせでこんなふうに両手を握られるのは恥ずかしいんですが。

 「君に会いたくって、会いたくって。頑張ったんだよ。

  おかげで仕事の能率よくなった。」

 あの〜。普通、面と向かって言わないと思いますが。

 「君が倒れたって連絡あったのは丁度日本についてタクシーに乗ろうとしてて。

  だけどヘリを用意させて来たんだ。もう、気が気じゃなくって。でもよかった。なんとも無くて。」

 そう、言うとふわりと抱きしめられた。

 「会いたかったよ、葵。」

 う、うれしいのですが、人目が・・・・。

 「私たち、お邪魔みたいね。他で飲みなおそっか。」
 
 「そうね、じゃあ、リョウがおしゃれなとこ案内してよ。」

 なんて、言いながらいそいそと帰る準備を始めた。

 あああ、この状況で置いていかないでほしい・・・・・。

 「ここは俺が払っとくから。連絡ありがとう。」

 さわやかに言いながらも私を離そうとしない。

 リョウともえはにこやかに手を振りながらも、

 目はいやらしい目つきをしてた。それって、どうよ。 

 ああ、帰っちゃった。

 とりあえず、この腕の中から逃げないと。
 
 もそもそしてたら、腕を解いてくれた。

 「ごめんね、ついうれしかったから。いやだったよね。」

 そういって寂しそうに笑った。

 「いやではないですけど・・・・。人前ではちょっと・・・。」

 何いってんだが私。恥ずかしいなぁ。

 「え?じゃあ、抱きついてもいいの?」

 満面の笑みで聞いてくる。

 まるで後ろに犬の尻尾がついて振ってるみたい。

 なんだか、かわいい・・。

 おかしくってつい笑ってしまった。

 「よかった。」

 と彼がつぶやいたのが聞こえた。














  











  
 






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