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 朝、6時半。まだ、誰も出社していない時間。

   私はこの時間に来てこの屋上庭園で植物に水をあげてから朝ごはんを食べるのを日課としている。

    だって、都会にしては空気はいいし、

 植物に囲まれながらご飯だなんて幸せだよね。



 自己紹介がおくれました。

 私は、内田 葵(うちだ あおい)28歳。この会社の企業ナースとして働いている。

 数年前までは大きな病院で働いていた。いろいろあってやめようと思ったけど

 だけど看護師という職業からは離れたくなくて企業ナースという選択肢をとった。

 ここでは毎日働く人たちが健康に過ごせるようにチェックしたり指導したりすることが

 私のお仕事だ。

 患者さんと触れ合ってないからちょっと物寂しい感じもするけど

   しばらくはここでいいかなって。毎日、充実している。

   「あ〜。今日も良い天気だ〜。」

 軽くストレッチしながら叫ぶ。白衣でこんなことするのはどうかと思うけど、誰もいないからいいよね。

 とその時、

 「うう〜〜ん。」

 男の声がした。

 だ、だれよ。浮浪者?まさか、ここは大企業だから警備はしっかりしてるはず。じゃあ・・・・。

 「うううううう。水・・・・。」

 水ね、水。ちょうどペットボトルの水を持ってたので

 声のほうへ行ってみた。

 ちょうどベンチがあってそこに横たわってる人が。スーツ着てるから

 この会社の人かな。

 恐る恐る覗いてみる。

 すらっとした手足、身長は180センチはあるかしら。スーツとネクタイにセンスのよさが光ってる。

 短く切った髪は茶髪でちょっと軽い感じがするけど、

 だけど骨の角ばった感じは男らしさがにじみ出てて。

 無精ひげもいい感じ。

 あ、見とれてしまった。いかんいかん。

 とりあえず、水を渡す。

 「はい、お水です。」

 「・・・・・。ありがとう。」

 そういって手渡した水をあっという間に飲み干した。

 そのあと、

 「君は?」

 「私はここの看護師やってる内田といいます。あなたはここの会社の人ですか?」

 私の言葉にびっくりしている。そんな変なこといったかしら。

 「僕は、一条 直(いちじょう すなお)ここで働いてるんだ。昨日徹夜で仕事して

  朝方やっと終わってさ。空気を吸いにここにきたんだけど気持ちよくってつい寝ちゃったみたいだ。」

 テレながら話す。

 「働きすぎるのは危険ですよ。ちゃんと休息とってくださいね。」

 そういって微笑んだ葵を直はまじまじと見つめ、

 いきなり葵の両手を握り、

 「君が好きだ。僕と付き合ってくれないか?」

 目は真剣である。

 はぁ、白衣マジックにかかってるよ。

 どうしてこう、男の人はナース服に弱いんだろう。

 「間に合ってます。」

 葵はそうにっこり笑ってその場を去っていった。

 取り残された直は

 「やっと見つけた。」

 とつぶやいていたのを葵は知らない。   









    






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